この紹介文を書くにあたり、本書を読み直したら、結局、15枚もの付箋をつけてしまった。みな、いつか作ってみようと思う料理のページ。例えば、旅先で味わった田芋を使った練り物料理を我が家の味にしたい、とか、島タコをこんな風にして食卓にだしたらあの人は喜ぶかしらん、という具合に、付箋は増えてゆく。
ただし、冒頭の抜粋のとおり、本書には食材の具体的な分量の記載はない。いざそれを作る際には、想像力を駆使して、味と格闘することになる。ね、楽しいでしょう。
著者の山本彩香さんは、50年以上、琉球舞踊一筋で生きてこられた方。そして、明治40年生まれの育てのお母さまは、貧しさから、16歳のときに自ら辻という花街に入り、「じゅり」(芸妓)となり、辻で、もてなしの料理を作り続けた、と著者は記している。そして、お母さまのことを「隠し味の名人」とも言い表している。
読み手は、山本彩香さんのお母さまを通じて、昔の沖縄の味を知る。そして、母と娘に通づる、食べる人への思いやりを感じる。
食欲をそそられる料理写真。料理を盛りつけた漆器、陶器、琉球ガラスの美しさ。
器の向こうにちらりと見える布。琉球舞踊に精進してこられた方ならでは、言葉や審美眼。
本書に登場する料理と、そこに添えられた言葉からは、沖縄の様々な表情が垣間見える。沖縄をごちそうさまでした。読み終えたときにこう言いたくなる、贅沢な一冊だと、私は思う。
なお、タイトルの「てぃーあんだ」とは沖縄の言葉。共通語に直訳すると「手の油」。さて、この言葉の含みをどう受け止めるか。本書は、料理を作るということの心意気を、教えてくれることだろう。
琉球料理の山本彩香 http://www.churashima.net/shima/okinawa/j_oyako/11.html |