2003年の冬。刷り上った本が、鹿児島の出版社からダンボールに詰められ送られてきた。完成した本を手にしたら、感動して涙を流す自分を想像していたが、それが届いたとき、私は、天井裏をネズミが走る六畳間で一滴の涙も流さなかった。うれしくて、友人に携帯電話で写真付きのメールは送ったけれども。どちらかと言うと、一ヶ月後に迫っていた、東京から石垣島への引越費用の捻出に気をとられていたのかもしれない。
大学卒業後、旅行会社に契約社員として就職。で、3年後に退職。結婚しようと思ってのことだった。が、結婚はなくなり、フリーライターになった。自称ライターゆえ、仕事はなかった。仕事と恋。20代でぶつかるであろう普通の事柄に、悩み、そして、出会った方々に助けられた時間がこの本、とこの頃思う。
悩みを、丁寧にゆっくりと解決させてもらう場が、私は、日本の島々であったのだと思う。
本を届けたことで再び連絡をとるようになった学生時代の恩師から、「あなたが島に魅かれるのは、あなたの気持ちを汲み取り、感謝の言葉をかけてくれる人々がそこにいるから」と言われた。もっともこれ、理想の伴侶像を語ったら、あなたは自分をちっともわかっていないと言われた後に投げられた、三十路女の行く末を案じての言葉、なのだが。つまり、そうゆう男性こそが、あなたにとって必要な人なのだ、と先生は言いたかったようだ。ともかく、私が島に魅かれる理由がそこにある、という指摘は、外れていないとは思う。
奄美大島のユタ神様、加計呂麻島で数日間を一緒に暮らした自称やもめの研さん、トカラ列島を結ぶ村営船で働いていた時代を語ってくれた中之島のふくじさん。この本に登場する人たちが話してくれた、彼らの人生。私は彼らの言葉に叱咤激励され、これからを夢みる今日がある。
だから、いま、なんとなく胸中がモヤモヤとしている人の手に、この本が届くといいな、と思う。島で生きる人たちの生き様は、きっと、なにかのヒントを与えてくれるから。
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