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  ポケットに沖縄を!
 
琉球布紀行 澤地久枝著

布を織り成す女たちの、心をまとう

「琉球布紀行」

 

著者:澤地久枝/発行:新潮社/価格:705円+税
 

〜もくじ〜

はじめに
首里の紅型一
首里の紅型二
読谷山花織(ゆんたんざはなうい)と手巾(てぃさーじ)
奄美大島紬
久米島紬
宮古上布
喜如嘉の芭蕉布
八重山上布
琉球藍
与那国織
琉球絣
首里織
会えなかった人 大城志津子
あとがき
文庫版あとがき
ゆうなの木のしたで 渡辺一枝






 石垣島の、サトウキビ畑。そこに寄り添うように建つ、八重山上布の工房。ある雑誌の取材でその工房へおじゃまをして布を見せていただき、うっとり。ひらりと広げた途端に布はふわっと空気をはらみ、光を放ったのです。
 島の植物からとった繊維が糸となり、それを島に育つ植物で染めて、織り上げる・・・。
  こうして生まれる八重山上布は、とてもうつくしい。
  でも、物凄く手間隙かけて作りだすものだから、気軽に手が出せる値段ではありません。
  沖縄に限らず、日本全国、人の手からなる織物は、たぶん同じなのではないでしょうか。
  でも、うつくしいものは、やっぱりいい。

 本書の舞台は、鹿児島から台湾までの島々の連なり、琉球弧。そして、それらの島々に息づくさまざまな織物と、それをいまに息づかせている人々が登場します。それにしても、琉球弧にある布の種類の多さよ! 本書には、もくじをご覧になればお分かりのように、11種類もの織物が登場。

  そしてこの本は、それぞれの布を織り成す人たちの極めて真摯な姿勢に向き合うように、とても真剣に一文字一文字をつむいでいる、そんな1冊なのです。
   八重山上布

  
   「苧倒し(ウーダオシ)」作業



  ところで、私はきものをまったく着ません。でも、著者の澤地久枝さんはきものがとても好きで、よく着ていらっしゃるようなのです。ですから本のあちらこちらに、きものを着る人にしか書けない表現が散りばめられていて、私にはそれが、とても新鮮。


紅型紅型

 
  奄美大島紬


  芭蕉布


琉球絣

 体調のすぐれない日、ウツっぽい日、藤村玲子のきものは着られない。きものに位負けして借着のようになる。力のあふれるきものを着る着手には、作品にこたえられるだけのエネルギーが必要と思われる。(P63「首里の紅型二」より)


  「大島」と言いなれているきものは、東京の十二月から二月くらいまでにうっかり着ると、カゼをひく。なめらかで軽く、光沢があるのと同時に、ひんやりとしていて、体温を奪ってゆく。(P91「奄美大島紬」より)


  上布は風通しがよく、べたつかず、高温多湿の夏の衣料にぴったいの条件をそなえている。(中略)
   しかし洋服の世界は別として、上布の夏姿を見ることはめずらしくなった。シワになるので敬遠という向きもある。衣桁にかけて霧吹きをし、わずかな時間で乾くころにはシワはとれる。たたんで押しをすることもできる。そうゆう知恵はひきつがれず、上布のきものはもっていても着ないままということが多い。(P145「宮古上布」より)


  宮古上布のきもの、そして帯。何十年着ても、しなやかにやわらかくなりながらシャンとして光っている長い命。(P155「宮古上布」より)


  しかし芭蕉布はなかなか手ごわい布でもある。容易には着こなせない。いくら寸法を加減して仕立てた下着であってもなじみにくく、袖口から外へ長襦袢の袖が出ることが多い。しかし芭蕉の芯に近い糸を使った芭蕉布はじつにやさしくて、袖口から襦袢がのぞくようなことにはならない。糸によっていろいろな芭蕉布が作られ、価格の差があるのは当然とやっとわかったところである。
 わたしの経験では、初心者ははじめ帯からなじんでゆく方がいい。(P157「喜如嘉の芭蕉布」より)


  琉球絣には、奄美大島紬や銘仙の持味によく似た、なめらかで光沢のあるものがある。生糸を使ったものだ。真綿から手で紡いだ紬糸を使ったものは、しっかり張りがあり、からだにふうわりとなじむぬくもりがある。(P267「琉球絣」より)

 こんな具合。

 しかしながら、日々、ジーンズにTシャツで過ごす私でも、沖縄の織物は、些少ながらご縁があるのです。それは、名刺入れ。社会人になってから今日まで、私の名刺入れは沖縄の織物で作られたもの一筋。ひとつ目は朱色のミンサー織りのもの。いまは与那国花織製。いずれもとっても丈夫で長持ち。しかもこの名刺入れは、織りに興味のある方なら、「あら?その名刺入れは・・・」、という風に話の潤滑油になってくれることもある優れものなのです。

  名刺入れに限らず、いまは各島々で、その島で折られた布を使って作ったバッグや財布、筆箱が作られて手頃な値段で売られています。

  きもの、という言葉に拒絶反応を起すことなく、もしもその布をうつくしいと感じたら、それぞれの生活にあうよう取り込めばいいだけのこと。(本当は、きものを着てみたいけれど・・・。)


  そうそう。本書は前から順番に丁寧に読まなくても、宮古島ファンならば、宮古上布の項だけ読んだってかまわないのです。きもの好きの著者のことですから、きっとそうと知っても、ふふふっと笑うだけで、怒らないはず。

  そうして、織りの深い深い、そして思いが込められた世界を、ちらっと垣間見るだけでもいいのではないかと。

  もちろん、織りや染めの世界に興味がある方ならば、ぜひぜひ手にとって欲しい、熱い思いがたぎる1冊でもあるのです。

(文・はるか)

 
与那国花織


  澤地久枝


◆美ら島物語「布を巡る旅」 http://www.churashima.net/shima/chura_kip/nuno/01/index.html

◆美ら島物語「雨の日の遊び方」より
  *沖縄本島で紅型染め体験
    http://www.churashima.net/shima/special/amenohi/okinawa/bingata/index.html

  *宮古島で宮古上布
    http://www.churashima.net/shima/special/amenohi/miyako/dentokougeicenter/index.html
  *石垣島でみんさー織り体験
    http://www.churashima.net/shima/special/amenohi/ishigaki/mineya_ori/index.html

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