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入賞

『沖縄にて芽生えた
故郷への愛』

東京都 小林 さと
入賞『沖縄にて芽生えた故郷への愛』入賞『沖縄にて芽生えた故郷への愛』入賞『沖縄にて芽生えた故郷への愛』

わたしは故郷が好きだ。好きだ好きだ好きだ。

といっても、誇れるものは何もない。いや、大げさじゃなく、ほんとに何もない。

例えば、違う土地からやってきた人に「君の故郷を案内してよ」と言われても、わたしは断る。だって「案内してよ」っていう人は、四季折々の自然が美しい山とか、公園とか、ガイドブックに載っているような遺跡とか、歴史的建造物とか、特徴的な風景とか、そう、沖縄みたいにきれいで透き通った海とか、そうゆうものを期待してるわけでしょ。そりゃそうですよね。わざわざ遠方からやってきて、何の変哲もないマンションやら公園やら汚い海やらを見せられたって、おもしろくもかゆくもきもちよくもない。

もういちど、はっきりと言っておく。

わ・た・し・は・こ・きょ・う・が・す・き・だ。

なんの変哲もないマンションやら公園やら汚い海やらしかなくても、好きだ。この間、沖縄の海を前に、わたしは確信したのだ。

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わたしが生まれ育ったのは、千葉県船橋市。千葉のなかでも東京に近い場所。中途半端だ。東京に家を持てない輩が買うようなマンションがたくさんあって、排気ガスむんむんの国道が通っていて、日本有数の交通事故多発道路があって、特徴のない公園があって、東京湾の一角であるにごった海がある。そんなの誰に自慢できるというの。誰に案内できるというの。そう思って生きてきた。もちろん、交通や生活環境はかなり便利。自分の故郷のいいところといえば、その部分だけを常に信じてきた。

でも、それは違ったみたいだ。

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一週間、沖縄の離島で過ごした。なんてきれいな海。砂浜が真っ白でさらさらしている。植物の色が生き生きと美しい。赤い瓦屋根のシーサーがおもしろい。島の人はとっても明るくてすてきだ。すぐにこの島が好きになった。もっと、ずっといたいと思った。

夕日の沈む時間、桟橋へ行った。夕日でオレンジに染まった海はきれいすぎてなんだか胸が熱くなる。でもそのとき、わたしはなぜか海を見ながら自分の故郷のことを考えていた。そう、あの何の変哲もないマンションと公園と汚い海のわたしの故郷だ。わたしはそのマンションで家族とたくさんの時間を過ごして、その公園で友だちと暗くなるまで遊んで、その汚い海の灰色の浜でデートをして、そうやって生きてきたんだなぁ。そのとき、はじめて自分の故郷のそれらの風景を愛おしいと思った。この島で暮らす人も、きっと、そんなきもちでこの島を愛してるんだろうな。この島の海がきれいとか、植物が美しいとか、そんな特別なことじゃなくて。

帰ってから海へ行った。相変わらず汚かった。でも、わたしは好きだ。生まれ育った、この街が好きだ。

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