|
夏の強い日差しに照らされた海は、おどろくほど温かく、何の抵抗もなくプカリと海の上に浮かんだ。ゴーグルをして顔を水につけると、そこには海の森が広がっていた。サンゴでできた森に色とりどりの魚が戯れている! おそるおそる頭をすべて水の中に入れると、音が聞こえなくなり、時間が止まったような気持ちになった。水から顔を上げて見上げると、夏の太陽と空だけが見える。太陽と空と海の中で、自分だけがちっぽけで、自然の大きさに包まれている感覚。
「がむしゃらに生きてる気がしてたけど、やっぱり人間って自然に生かされてるんだよなー」などとぼんやり思いながら、水の流れに身を任せて浮かんでいると、まるで地球というゆりかごに眠っているみたいな心地よさを感じていた。何時間でもずっとそのまま揺れていたいような、不思議な気持ちだった。夢心地の時間はあっという間に過ぎ、船に上がってから見る海はその前とは全然違って見えた。やさしく、すべてを包み込む母のような海。見ていると吸い込まれそうになるほど、私はその海を時間の許す限り見つめていた。大嫌いだった海が、私にとって忘れられない海に変わった。
|