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入賞

『沖縄が教えてくれた、
私にとってかけがえのない海』

山口県 中村 美絵
入賞『沖縄が教えてくれた、私にとってかけがえのない海』入賞『沖縄が教えてくれた、私にとってかけがえのない海』入賞『沖縄が教えてくれた、私にとってかけがえのない海』

小学校1年生の時、プールの時間が大嫌いだった。生まれて初めて顔を水につけたとき、怖くて目が開けられなかった。そして、その年の夏休みは水泳の補習授業を受けることとなり、それ以来、私にとって泳ぐことは大嫌い、そしてじりじりと暑くなると憂鬱になったものだ、「ああ、またあの夏がきた」と。高校1年の夏にようやく水泳の授業から解放されて以来、私は自分で水着を買うこともなく、一度もプールに遊びに行くことはなく、まして海になんて縁のないまま人生を終わる予定だった。

そんな私だから、友人に「石垣島に旅行に行こう」と誘われたときも、それほど乗り気ではなかった。ただ単に友人と一緒に旅行ができることを楽しみにしていただけだ。しかし、海好きの友人が、泳がないわけがない。日程に海で泳ぐ予定を入れられた私はしぶしぶ水着を高校以来初めて購入したが、「足のつかないところで泳ぐなんて絶対に嫌だ」という主張は曲げなかった。

平成14年7月、石垣島に初上陸。飛行機から降りた瞬間、息が止まるのではと思うほどの熱気だった。見上げるとつきぬけるほどの青い空と、強い日差しを放つ太陽。それが沖縄の夏。私の大嫌いな夏。これから先の旅程にかなり不安を覚えた瞬間だった。


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石垣島から竹富島へ高速船で渡るため、離島桟橋へ移動する。私は目を疑った。これまで見た海の色と全く違うのだ。まるで絵の具で作った色、いや、それ以上。とても人の手では作れないエメラルドグリーンだった。そしてその透明度の高さにも驚いた。下をのぞくとサンゴや色とりどりの見たことのない魚が見える!

当然のことながら、「シュノーケルをやりたい!」と友人が言った。確かに、あのきれいな海の中は見たいけど、あんな深い海に入るなんて信じられない!と怖がる私は「まあまあ、ライフジャケットあるから沈まないって」となだめられ、本当に「清水の舞台から飛び降りる決意」ってこういう事なんだろうと思いながら、船から海に身を預けた。




夏の強い日差しに照らされた海は、おどろくほど温かく、何の抵抗もなくプカリと海の上に浮かんだ。ゴーグルをして顔を水につけると、そこには海の森が広がっていた。サンゴでできた森に色とりどりの魚が戯れている! おそるおそる頭をすべて水の中に入れると、音が聞こえなくなり、時間が止まったような気持ちになった。水から顔を上げて見上げると、夏の太陽と空だけが見える。太陽と空と海の中で、自分だけがちっぽけで、自然の大きさに包まれている感覚。

「がむしゃらに生きてる気がしてたけど、やっぱり人間って自然に生かされてるんだよなー」などとぼんやり思いながら、水の流れに身を任せて浮かんでいると、まるで地球というゆりかごに眠っているみたいな心地よさを感じていた。何時間でもずっとそのまま揺れていたいような、不思議な気持ちだった。夢心地の時間はあっという間に過ぎ、船に上がってから見る海はその前とは全然違って見えた。やさしく、すべてを包み込む母のような海。見ていると吸い込まれそうになるほど、私はその海を時間の許す限り見つめていた。大嫌いだった海が、私にとって忘れられない海に変わった。

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翌年、私は生まれて初めて夏が来るのを首を長くして待ち、セミの声にせき立てられるように再び石垣島に渡った。スキューバーダイビングのライセンス講習を受けるためだ。もっとこの海を知りたいと思った。深く潜るほど、私は海に抱かれていると強く感じる。これは錯覚ではないだろう。私はそっと身を預ける。そうすると海は、私に教えてくれた。「大丈夫、もっと力を抜いてごらん、その方がずっとうまくいく」と。それは海の中だけではない、私の生き方をも教えてくれているように聞こえた。

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