カメラ片手にうなだれて歩く僕を、ビーチのカップルは胡散臭そうに横目で見る。そそくさと僕は退散する。「ビーチパラソルに海パン」というシチュエーションでない限り、四月の宮古島の炎天下はすでに殺人的だ。
僕が宮古島ツアーを決行する条件は、平日であること、安宿であること、レンタカーつきであること、そしてなにより晴れでなくてはならない。勝手な都合を並べたが、すべては星を採りに行くための条件なのだ。
「採る」と書いたのは誤植ではない。星空はレンズを通して僕のフィルムに採り込まれるからだ。
空港に着くと早速レンタカーでロケハンだ。 制限速度を下回る島人の車についていくのは苦にならないが、窓越しに射し込むエアコンをものともしない日差しには、ほとほと参る。
さんざん彷徨を繰り返してやっと今夜のポイントが決まった。 カメラと三脚を展開する頃には薄暮も終わり、月齢10の月光は僕の身体を突き抜けて足もとの砂にもぐり込み、再び湧き上がってあたりを満たす。 なんて透き通った空気だ。
思う存分月光浴を堪能した頃には冬の星座も次々と西に傾き、夜半に南中した南十字星はα星だけを雲に隠して水平線に浮かんでいる。 高度を下げて赤みを帯びた月が蟹座とともに水平線に沈むと、漆黒の空に一筋の雲のような天の川が浮き上がった。 今まさに惑星に立って僕らの属する銀河を横から眺めている。 宇宙に確実に存在する自分を実感する時だ。
誰も知らない僕だけの景色。誰も知らない僕だけの時間。 昼間のカップルはベッドの中で、たぶん今ごろ夢の中。 僕の口角は知らずに上がり、南風に舞う癒しの女神が応えるように微笑んだ。