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『美ら島を歩いた朝』

神奈川県 池田 清恵
美ら島を歩いた朝美ら島を歩いた朝美ら島を歩いた朝

波照間島で過ごす最後の日。夜明け前に目が覚め、窓の外を見ると、明るくなり始めた空に星が輝いていた。毎晩厚い雲に隠されて、なかなか見られなかった波照間の星空。その美しい光に誘われ、私はこっそり宿を出た。そして朝日を見に行こうと一人、東の空を目指した。

薄暗い道を歩き始めてすぐ、右足のビーサンと踵の間がヌルッとした。歩くに連れ、とても嫌な予感。匂いを嗅ぐと、臭い!慌てて土に擦りつけた。何とも不吉なスタートだが、その時はやけに前向きだった私。ウン(運)が付いたんだと自分に言い聞かせ、再び歩き出した。


赤いハイビスカスが咲く道を、オレンジ色の水平線に向かい真っ直ぐ歩く。周りは緑のさとうきび畑。空には今にも消えそうな星が瞬いていた。


ふと下を見ると、波照間の幻の酒「泡波」の小瓶が一本落ちていた。拾ってみると、何と栓が開いていない!泡波ゲットだ!さっき付いた幸運に感謝しながら、私はまた歩いて行った。

 


聞こえるのは風に揺れる葉の音と、私の足音だけ。そんな静寂の中、道の向こうで
誰かがこっちを見ていた。恐る恐る近づくと、それは白ヤギ。なぜかニコッと笑って
いるように見える。私は立ち止まり「おはよう」と言った。するとヤギは期待通りに
「メェ〜」と返事。微笑むヤギに見送られ、私はさらに先へ進んだ。

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しばらく歩くと道路に出た。
澄み切った空気の中、空は刻々と色を変える。黄色、橙、ピンク、水色。幾つもの色が大空に広がり、その色を映した雲は形を変えながら流れていく。

遠い水平線が眩しく光った。
ついに朝日が昇ってきたのだ!朝一番の太陽は、強く美しく輝いた。
 
私は最南端の碑まで歩いた。見渡す海はキラキラしている。この海の先はフィリピン諸島。随分遠くまで来たんだな。しばらく海を眺め「頑張るぞー!」と叫んでスッキリ。

来た道を戻らずにそのまま道路を進んだ。
少し遠回りでも帰れるだろう、という甘い考えでひたすら歩く。そして見えてきたのは空港。全く見当違いな所に来てしまった。
不安を抱きつつも、さらに前進。しばらく歩くと空が急に暗くなり、笑ってしまう程の大雨が降った。前から来たトラクターのおじいとおばあも、ずぶ濡れの私を見て笑っていた。

雨はその後すぐに止み、私は集落に迷い込んだ。
配達中の郵便屋さんに道を尋ねると、宿はまだ遠いとのこと。
私はその集落を離れ、教えてもらった通りに歩いた(つもり)。が、方向音痴な私は再び迷子になってしまった!

人気の無い海沿いの道を行く。
いつの間にか太陽の位置が高くなっていた。帰りの船に乗り遅れたらどうしよう!途方に暮れて歩いていると、ヤギに草をあげているお兄さんがいた。
もうこの人しかいない!道を尋ねると「けっこう遠いよ」と言って、車で送って下さった。

お陰で私は無事に宿に辿り着き、小さな冒険は幕を閉じた。
「夏にはよくその辺の道端で、道に迷った男の子がバテてるよ」と、その親切なお兄さんは苦笑いしていた。

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