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2004年
入賞

『明日、キビ畑に会いにいく』

兵庫県 柏木 舞子
明日、キビ畑へ会いにいく明日、キビ畑へ会いにいく明日、キビ畑へ会いにいく

2004年、「深呼吸の必要」という映画が公開された。沖縄の離島の「キビ刈り隊」をテーマにしたものである。

「キビ刈り隊」とは、サトウキビの刈り入れをおこなうアルバイトの集団をさす。
募集に応じた若者たちが、冬から春にかけて、全国から集まる。彼らは、共同生活をしながら、まいにち毎日畑にはいってキビを刈る。林のように茂った畑が、見渡す限りに平らになるまで刈り続ける。


上映を知って、さっそく観にいった。映画は、離島の生活のようすが忠実に再現されていて、思わず感情移入してしまった。
独特の共同生活に戸惑う主人公たちの姿に、にんまりとうなずいた。
ぎこちないカマの動作ひとつひとつに、思わず力がはいった。
そして、刈りいれがおわった畑に寝ころぶ、主人公のすがすがしい表情に、涙がこぼれた。

 



わたしは映画と同じような、キビ畑の中にいたことがある。

大学1年生のとき、はじめて沖縄へ旅をした。中学生の頃に、八重山諸島が舞台となった小説を読んで以来、訪れてみたいと想いをつのらせていた。そして憧れの地で、大きな出会いに恵まれた。

その日、西表島は、朝から小雨がじっとりと降り続いていた。レインコートをきて、道路脇をたどって散歩していた時のことである。横に軽トラックが停まり、窓からおじさんが顔をだした。

「なにをしているか。そこまで乗っていかないか」

好意に甘えて、泊まっていた民宿まで乗せていってもらうことにした。世間話をしていたら、あっという間に目的地に着いた。お礼を言って車を降りようとすると、おじさんが言った。

「今、あなたくらいの歳の子が、キビ刈り隊でいっぱい島にきている。あなたもやらないか」


翌朝、畑であたえられたのは、刈り取ったサトウキビの葉っぱをおとす「かさぎ」という仕事だった。
初めて手にしたカマは、ダンベルのように重く感じられた。右手にそれを持ち、左手で背丈よりも長いキビを支える。よろめいてひっくりかえりそうになる自分が情けない。四苦八苦しながら、力いっぱいカマをふりおろす。

やがて作業になれてくると、畑の中のここちよさを味わう余裕がでてくる。ひさしぶりに手にした土の感触と香り。キビ畑をすりぬけるように吹く涼しい風。畑の向こうには濃い緑が生い茂って、離島とは思えないような壮大な森をかたちづくっている。
かけっぱなしにされている古ぼけたラジオの音に耳を傾けながら、五感で自然を感じた。
休憩の時間、あたたかいお茶の湯飲みを両手でつつみこむ。カマを握りしめる手の緊張が、じんわりとほぐれた。お茶請けにだされた黒糖の、体にしみるような甘さを、忘れることができない。

あれから6年経った今、わたしは社会人となった。四六時中パソコンにかじりついているためにおこる肩こり。
キビ刈りをした翌日の、筋肉痛のつらさに少し似ている。
日常のふとした瞬間に、あの日のできごとを思い出す。次の仕事の休みには、きっと訪れてみよう。「明日、キビ畑に会いにいく」と、わくわくしている自分を想像してみる。

わたしが沖縄を想うとき、いつも心によみがえる風景がある。


 2004年他作品はこちらから
(2005.09.05掲載)


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