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最優秀作品

竹富島のおばぁ

沖縄県 武藤泰孝
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1984年の夏、マリンスポーツのアルバイトをするため、竹富島で2か月ほどを過ご したことがあります。
竹富島でのバイトと言えば住み込みが基本ですが、私の場合、バイトを紹介してくださった方がこの島の出身ということもあって、その実家に下宿させてもらっていました。

バイトの中身は、ジェットスキーのインストラクターのアシスタント。
こう言えば聞こえはいいのですが、実際は石垣島からやってくるお客さんを港まで迎えに行ったり、ジェットスキーを体験できる浜まで案内したり、空のてっぺんからぎらぎら照りつけるティダを恨みながら、えっちらおっちらと燃料を運んだりと、とにかくいろんな雑用をこなすことに。
予約のお客さんがいない場合には、コンドイビーチまで客引きにも行きました。
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当時の竹富島は、小柳ルミ子さんのヒット曲の影響もあって、今ほどではないですがやはりお客さんが大勢訪れる人気の観光地。朝イチの船が桟橋に着く午前9時頃から、わやわやと賑わい始めます。そして夕方、最終便が竹富を離れると島全体にホッとしたような空気――今日も一日ごくろうさん、というような雰囲気が漂ったものです。


image 最終便が離れると、仕事もようやく終わり。
下宿していたお宅に戻り、シャワーを浴びて洗濯をし、食事を終えると、もう眠くて眠くてたまりません。そして、アッという間に朝が来て、また一日が始まります。
もちろん、夏は観光のトップシーズン。
お休みの日があるはずもなく、バイトの疲れに暑さによる疲れ、それに生まれて初めて他人のお宅にお世話なっている気疲れも加わって、ある日、些細なことで雇い主と大喧嘩。

「もうバイト辞めさせてもらいます!」の捨て台詞を吐くや、下宿先に駆け戻って荷物を整理。
さっさと、ユースホステルに引っ越してしまいました。

そして、その夜。
雇い主から「今までのバイト代を払うから」との連絡があったので、下宿先へと出かけることに。
でも、挨拶もそこそこに飛び出してしまったバツの悪さもあって家の中に入るのを躊躇っていると、下宿先のおばぁから「バイトを辞めたら、もう他人か!」と一喝されたのです。

おばぁとは、食事のときやテレビを見ているときなどに世間話をする程度。
私が人見知りする性格なので、打ち解けあうような話をしたことなどありませんでした。
でも、おばぁは、たった2か月近く一緒に住んだだけの得体の知れないナイチャーを「他人」とは思っていなかったのです。
そのことがなぜか嬉しくて嬉しくて、思わず熱いものが・・・。

あれから21年。縁あって今、石垣島に住んでいる私は、そのおばぁが健在なことを知り、今年の7月、懐かしい下宿先を訪ねてみました。
しかし、おばぁは不在で会うことは叶いませんでした。
でも、また近いうちにおばぁを訪ねてみたいと思っています。

それまで、おばぁ、がんじゅーでね!
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 2005年他作品はこちらから
(2006.01.12掲載)

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