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最優秀作品

島人のサトウキビ

東京都 渡辺八千代
最優秀作品『島人のサトウキビ』最優秀作品『島人のサトウキビ』最優秀作品『島人のサトウキビ』

『波照間はすごい。』
友達にそう聞いて、今回の旅の行き先を決めた。一人旅だ。
しかも21回目の誕生日を迎える。
朝に弱いはずの私が5時起きで空港へ向かう。
こういう時だけは起きられる。
不安はほとんどなく、ドキドキでいっぱいだった。
飛行機を乗り継ぎ、高速船で波照間へ。


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夜のゆんたくで、一人の島人と出会う。
彼はここでサトウキビを作っているらしい。
サトウキビ作りについて話してくれる。
彼の汚れた作業ズボンが、その大変さを物語っている。

サトウキビを食べたことがないと言ったら、明日の朝、
持ってきてくれるという。
『約束だぞ。絶対忘れるなよ』
何度も念を押す。
酔っ払いながらもその約束だけは胸に焼き付ける。

でもサトウキビを作っている人たちからすると、
他人にサトウキビをあげることは、アホのやることなのだという。
『命とられるのと一緒なの。来年の収穫なんだからね〜』
彼は言う。でも特別に持ってきてくれるらしい。

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嬉しさを隠せずにとなりにいた人に話すと、
『いつもそう言うけど、酔っ払って覚えてないそうですよ』
と一言。

なんだ、そうなんだ。でも当たり前だよね。
大切なものだもんね。収穫は島人の命だしね。

元気をなくして眠りに就く。

 

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次の日、少しの期待を胸に、目を覚ますと天気は雨。
私は2便で帰らなければならない。時間はあまりない。
でも1便を見送ると同時にバイクに乗った島人が、サトウキビ片手にやってきた。

覚えてたんだ!!


嬉しくて泣きそうになる。
『宿に食べ方知っている人がいるから』
彼はそう言ってすぐさま走り去ってしまう。

宿に帰ったけど、誰もいない。
とりあえずサトウキビを置いてニシ浜へ行く。
残り少ない時間を、宿のみんなとここで過ごす。

せっかくくれたのに、食べられないまま帰るのかな...。


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ニシ浜を見ながら考えるのは、島人のサトウキビのことばかり。
胸が苦しくなる。もう帰りの時間がせまっている。
そんな気持ちのまま、送迎のため宿へ戻ると目に映ったのはあの作業ズボン。

   島人だ。

なたみたいなもので皮を剥ぎ取り、
『ここかじってみ。甘いかどうかはわからないけどなぁ〜』
と言いながらサトウキビを差し出してくれる。

それを受け取る。一口かじって、涙があふれだす。
甘くておいしい。島人の作ったサトウキビ。
送迎の車に乗る前に、『これ持ってきな』って、もう2本くれる。

涙が止まらない。サトウキビを握り締めて港に向かう。
雨がだいぶ強くなってきた。風もすごい。

宿のみんなが見送りにきてくれる。島人も少し遅れてくる。
でもすぐにバイクでどこかへ行ってしまう。
...と思ったら、港の突端まで来てくれる。
そこは船が最後まで見える場所。
でも宿のみんなのいる場所とは違って、屋根がない。
変わらず雨と風は強い。

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ついに出航の時。
さっきから泣きっぱなし。涙が止まらない。

モーター音とともに、船が波照間島から少しずつ離れていく。
みんなの顔がだんだん小さくなる。
涙のせいでぼやけてしまう。
必死にタオルで涙をぬぐいながら、くしゃくしゃの顔で笑顔を
つくる。
腕が痛いのも忘れて手を振り続ける。

またくるね、またくるね、絶対またくるね

心の中で何度もそう叫ぶ。

最後に島人の姿。
握り締めていたサトウキビ2本を大きく掲げて、
ありがとうって泣きながら叫ぶ。
最高の誕生日プレゼント。言い足りないくらいのありがとう。

サトウキビの甘さ、忘れない。
島人の優しさ、絶対忘れない。
肌寒くなってきた空を眺めながら思う。
この空は波照間とつながっている。

腐り始めたサトウキビを、私はまだ捨てられずにいる。

 

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