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優秀作品

父の海パン 
〜沖縄の旅

茨城県 小田部早苗
優秀作品『父の海パン〜沖縄の旅』優秀作品『父の海パン〜沖縄の旅』優秀作品『父の海パン〜沖縄の旅』

妙な生地の分厚いズボン。背中に昇り竜が描かれた黒いシャツ。しかし、なぜか帽子だけエコ使用の登山帽子という不思議な姿。
還暦を迎えた父と、ひょんなことから沖縄に出かけることになった私。9歳の息子も一緒に、3人の妙な旅が始まった。


8年前に初めて沖縄の風を仰いでから、完全に慢性沖縄病にかかってしまった私。しかし、これまで本島は何度も訪れていたのだが、離島へは訪れる機会がなかった。

それがやっとのことで、そのチャンスがやってきた。でも、一緒に行く予定だった夫は行けなくなり、沖縄好きの母も都合が合わず、たまたま空いていた父が行くことになってしまった、のである。

父は、生まれも育ちもど田舎の茨城県。温泉旅行をこよなく愛し、出かける時は必ずガイドブックをくまなく読むという心配性。そして、異常なまでのせっかちときている。やっとの思いの夢の離島旅に、そんな父が一緒で大丈夫なのだろうか?

その舞台は、海の美しさでも離島一と言われる波照間島。石垣島から船に乗り、青く飲み込まれそうな海と並走していくと、どんどん緑の大地が迫りくる。
「波照間島だ。」
私はなぜだかわからず、涙が次から次へと溢れ出てきて、
まるで心臓が鳥肌を立てているようだった。

しかし、父は…。
「何かなんにもないっぺよ。何すんだ〜」
ときた。とりあえず私は、聞かなかったことにする。

気を取り直して、
「そういえば、ちゃんと水着持ってきた?」
「何でだ!俺は焼けるのが嫌なんだ!」
「・・・。」
この人は、なぜ今波照間島にいるのだろう。

まあいい。父はいないことにして、早速私は、どこまでも透き通るニシ浜の海に浮かんだ。この、海と空の境界線がなくなる瞬間が、たまらなく好きだ。
シュノーケルをして、魚たちと本気で追いかけっこしていると、9歳の息子がもう夢中にならないわけがなかった。

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image 宿泊した宿は、ニシ浜の目の前に建つ。部屋からもその美しい海が見えるのだが、何と言っても夕暮れ時の屋上からの眺めは、たまらない。
私達が海から帰ると、父が一人屋上で、オリオンビール片手に海を見ていた。
「いんや〜、すんごいキレイだな〜。」
ビールのせいなのか、夕日のせいなのか、とっても幸せそうな顔色をした父がいる。
(お父さん、本当にいい顔してるよ。)私は何だか無性に嬉しくなって、心の中でそう父に叫んだ。



次の日、誰よりも先に海に向かう父の姿が。海は嫌いだって言っていた父。
せっかちだから意味もなく大慌てで、パンツだろう変な海パンのまま、どんどん海へ入って
いった。

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