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第27回西表は船浮の旅3
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 船浮の夜は小雨の肌寒い天気にもかかわらず、大盛り上がりの中で時間がたっていったわけ。
 そんな中、米蔵さんは細かな動きを見せ、時々その場からいなくなるんだよねぇ。聞けば、海運業と合わせて新聞や小包あたりも請け負っているようで、配達やら何やら、とにかくその場に余りじっとしていないわけ。というよりも働き者なんだよねぇ。


  これが、そんな動きの合間をぬって、実は食べた巻貝の殻もどこかに運んでいったわけ。それから1時間はたっていなかったと思うけど、米蔵さんが「ヤドカリの引越しを見せるからおいで」というもんだから、見ても見なくてもいいぐらいの気持ちで、小雨降る中を傘をさしながら懐中電灯を持って家の裏の垣根を抜けたら、そこに大きな木があって、その下にブロックが積み上げられている場所に案内されたわけさぁ。


 そこに懐中電灯の明かりを照らしながら近寄よるにつれてヤドカリががさがさと
動いている様子がわかる。それでも、そのくらいの数のヤドカリなら沖縄で何度も
お目にかかったことがあるから。気にはならなかったんだけど・・・・・ところが・・・・
ところが、さぁ。おもいっきり近づき暗がりにうごめくヤドカリたちにしっかり明かりを照らしてみて、も〜〜〜ビックリ!!


 なんと、そこはヤドカリの集団引越しの現場だったわけさぁ。
みなさん、一度でもいいからヤドカリが引越しする場面を見たことがある?
中には、テレビとかで見たことがある人もいるかもしれないけど、人の目の前で堂々と集団で引越しするヤドカリは見たことが無いでしょう。これがけっこう面白いわけ。


 それぞれ、一生懸命に自分が引越ししたい宿を探すんだけど。まずは軽く品定めをしてこれかなと思うと、とても器用に二つのハサミで貝殻の外枠をはさみながら、確認しているんだけど、その姿が貝殻の大きさをしっかりと自分にあうか測っているように見えて滑稽なんだよねぇ。

ヤドカリの引越

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 それで、それが合うと思うとすばやく今の貝殻から新しい貝殻にお尻を移すんだけど、その瞬間が恥ずかしそうで、ためらいがちな行動がまた可愛いわけさぁ。
 そして、引越しに成功すると、そそくさとその場を立ち去る彼らの新居が、全て自分たちがさっき食べた貝なわけだからねぇ。何か気分も違うわけよ。


 当たり前のことだけど一時間もするとそこには、小さな貝殻の残骸だけが残るわけで、米蔵さんに聞けば、季節は関係なしに食べた貝殻を捨てると、毎日でもヤドカリが大勢でやってくるというから、自然は本当に不思議だな〜と思いながら船浮の小雨降る夜は更けていったのでした。


                                    うちなー噺家 藤木勇人

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美ら島物語藤木勇人の『うちなー島旅見聞録』
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