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波照間で飲む生ビールのうまさと言ったら!

やしがにそば
極楽じゃー

港の待合所にある「イーノー」は、「泡波」が飲める貴重な店でもある。


泡波。この泡盛の存在で波照間島は有名になった。生産量が少ないこともあって幻の泡盛と呼ばれている。島内でもなかなか手に入らない生産量。これを「イーノー」ならグラスでいただけるのである。
でも、何度か泡波を飲んだことがあったボクは、その希少さより、生ビールの快感を選んだ。やっぱ生ビールっしょ!


そして、あまり期待もせず(だって港の待合所の小さな小さな店なんだもん)、「やしがにそば」を頼んだ。これは予約制。美ら島編集部のOさんが予約しておいてくれたのである。


オヤジがひとりで寡黙に作り出す。
ボクはエメラルドグリーンの海を眺めながら、ひたすら生ビールをプハーーッと飲む。
工事の人たちが横でカレーを食べている。民宿の人たちが新しいお客さんを迎えに来ている。テレビでは沖縄ローカルの番組をやっている。島の日常がここにある。時間の一歩一歩が実にゆっくりだ。そして時間があちこち道草している感じ。目的地に向かって一直線、短距離走しているような都会の時間たちに比べて、なんと素晴らしきナマケモノの時間たちであるか。

「はいー、できたよー」



ヤシガニがドンッと乗った豪快なそばが出てきた。
マジでほとんど期待していなかっただけに「おお!」と驚く。なんだかうまそうではないか。


まずスープをひと口すすってみる。ズズズ。おお…!?


それは、ヤシガニのミソをベースにして塩としょうゆで調味しただけのシンプルなものだった。なんだか化学調味料ドバドバのありがちな味を予想していたのだが(失礼!)、これはもう全然違う。うまひ。ヤシガニのミソの味が最大限活かされていて、余計な味が足されていないのだ。ありゃりゃ、この島、これ以上幸せを与えてくれるってわけ?


ヤシガニそれ自体はそんなめちゃめちゃうまいものでもないと思っていたが、ダシがほどよく染みた身は別物的にうまくなっている。いい感じにヤシガニの脂がからんだ麺もうまい。しかも生ビールに合う。塩加減が絶妙なこともあって、生ビールのうまさが加速されるのだ。


うひひひひ! こりゃ極楽じゃ!


ヤシガニそばをすごい勢いで食べ終えたボクは、生ビールをもう一杯頼んで、ジョッキを手に海に向かって歩いた。
こんなに全部揃ってたら、帰れなくなっちゃうよ………グェップ。


ちょっとおセンチなゲップがひとつ。
ヤシガニのミソの香りとオリオンの生ビールの香りが混ざったそれは、果てのウルマ(珊瑚礁)に向かって、風に乗って消えていったのであった。

                                                                  (2001.10.17掲載)




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