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ぬちぐすい
 
 

おじさんが最初に教えてくれたのは『あかとんぼ』でした。運転手のおじさんは歌がとても上手くて、覚えが悪いわたしに嫌な顔ひとつせず何回も弾きながら歌ってくれました。
「三線も歌もすごく上手いですね」というと、おじさんは少し照れて、
「沖縄では皆が集まったらこうやって歌うのさぁ、みんな出来るさぁ」
と謙遜していました。
わたしが何回まちがえても
「あんたはすじがいいさぁ、初めてなのにうまいさぁー頭いいさぁ」
と何回も褒めてくれて、手書きで分かりやすい楽譜も作ってくれました。

わたしもだんだんと慣れてきて、涼しい風に優しい三線の音とおじさんの声とわたしの声が乗って、ずっと続く緑と白の道の向こうに消えていくのが見えるようでした。歌っては風と共に消え、歌っては風に乗って消え、わたしはさっきまで見てた海の波を自分が作っているような気持ちになりました。

ニ曲目の『島歌』に入った頃みんなが帰ってきてしまい、おじさんのレッスンは終わってしまいました。わたしはおじさんに何回もお礼を言って自分のバスに戻りました。バスに戻ってからもさっきまであった事ばかり思い出していました。

ひとりでいるのを見かねたおじさんが、わたしに話し掛けてくれた。暇をしないように飽きないように、何回も恥ずかしくなる位褒めながら三線を教えてくれた。初日にして最高の思い出が出来てしまった!!と。

次の日私は自分のバスのガイドさんに呼ばれました。ガイドさんに手渡されたのは、どこかで見覚えのある字が並んだ三線の楽譜。そうです、運転手のおじさんが楽譜を清書してガイドさんから私に渡してくれたのです。
その時の嬉しさと言ったら、本当に言い表せません。
「○○小学校何号車」と書いた大きめの厚紙の裏にわざわざ三線の絵まで書いてくれて、それぞれの名称から何から、そして一緒に歌った『あかとんぼ』と『島歌』の楽譜も書いてありました。
そこまでしてくれたのにわたしは手紙でしかそのお礼を出来なくて、今ではそんな自分がとても悔しいです。

でも今度沖縄に行ったら、いや必ず行って修学旅行では高くて買えなかった三線を買って、おじさんの楽譜を見てまずは「あかとんぼ」と「島歌」をちゃんとひけるようになりたいです。そしてまたおじさんに会って一緒に歌えたら…
なんだかすこし切ないけど、すごくいい沖縄の思い出です。

今は高校三年生なので、受験勉強でうまくいかない自分にイライラが溜まったりすることもしょっちゅうですが、その修学旅行の思い出を思い出すと心の底から優しい気持ちになれます。
本当に楽しかった。おじさん、どうもありがとう。

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