那覇からバスに乗り、国道58号をかれこれ1時間。のどかな車の流れの上を轟音のエアフォースが瞬間横切った。
すぐに戻ってくる静寂。旅をするといろんな日常を垣間見る。
これから向かうのは花織の里・読谷。繊細な色調の糸で織りなされた『読谷山花織』という布の産地だ。規則正しく幾何学模様が織り出されているが、無機質な印象は受けない。織り手の暖かさが伝わってくる布だ。
喜名バス停で降りて、県道12号にそってのんびり西に歩く。太陽が強い。公園脇に停まっているタクシーは、運転手さんが昼寝をしているのか足先だけしか見えない。
小学校の建物から聞こえてくる、
子供達の声。
車は行き交うけれど、歩いているのは
私だけ。
人の気配はあるのだけれど、誰の姿も見えない不思議な午後。
読谷は焼物の産地でも有名で『やちむんの里』と呼ばれる工芸村がある。
ちょうどお昼。お食事処もあるようなので、昼食がてら寄ってみることにしよう。
そう決めて間もなく、すぐ横に車が停まった。
「じゃ、どこまで乗るのかな」
乗っていたオジィが声をかけてきた。乗るのかという意思確認はとばし、話は目的地を問うことから始まっていた。あまりに自然な展開で、遠慮する選択肢はもはやない。
「えっと……やちむんの里に行こうかと思って」
「そうかァ」
後部座席にすべりこむ。シートは白いカバーで覆われて、まるでタクシーのよう。思わずメーターがあるかと運転席を覗き込んでしまった。
「タクシー……なんですか?」
「いやいや、やってみたいけどなァ。年がなァ」
少し荒い運転で脇道に入っていく。やちむんの里の入口で私を降ろすと、振り返りもせず道を戻っていった。
美ら島物語
|
美ら島情報
|
布を巡る旅
この記事に関するご意見・ご感想を
こちら
までお寄せ下さい。