お昼をはさんで、午後は自宅を工房にしている方々を訪ねることに。
「この辺を歩くとね、トタン、トタンって機を織る音が聞こえてくるんですよ」
先導する事業組合の方が言った。
ユイマール館の周辺・真謝は特に織り手の方々が多く住む地域で、かつ洗練されているのが特色なのだという。
年季の入った赤瓦の家の間を進む。しかし、いっこうに音は聞こえてこない。
「おかしいな……あ、そうか」
昼食を終えて、ひとやすみしている時間帯かもしれないとのこと。その言葉は的中していたようだ。午後2時をまわると、あちこちの家からかすかな音が聞こえてきた。
久米島紬の特色は『分業しないこと』だ。
意匠、糸括り、染め、そして織り。
すべての工程を生産者がこなさなければならない。
これは伝統を絶やさないために大切なことだという。再び伝統の危機を迎える日は来るかもしれないが、工程すべての知識をもっている人が1人いれば、後世に伝えることができる。
分業しないだけに、どこへ行けば染めが、織りが見られるということはない。
今はどこの家も織りに入ってしまって
いる時期で、染めは見られないかもとのことだった。
「……あ、そうだ。玉城さんのところなら!」
緑がのびのびと茂った、一件の家の裏庭に入っていく。蒸し風呂のような熱気が身を包む。かまどにかけられた煮え立つ鍋。中には濃茶の液体が入っていた。
「玉城さーん、染めやってる?」
「ああ、やってる」
物干竿に、黒い糸の束を干している
ところだった。御高齢のようだし、かなりの力仕事のようだが、その動きは無駄がなかった。
「グール染めはもう75回目になるから、もうちょっとなんだよな……でも予備のグールもつくっとかないと」
身体を休めることなく、玉城さんは独りごとのように言葉を発する。
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