美ら島物語
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わぁー…、何にも、無い……。」
港といっても、本当に何にも無いのだ。港というか、船着き場といったほうが正確だろう。あるのは、コンクリートの波止場と、船を待つ人のために作られた屋根とベンチだけ。なんだか、おもしろくなってきた。このいさぎよさが、気持ちいい。「ああ、島に来たんだなぁ」と再び実感する。

いたい。早く、マングローブに会いたい。さっそくバスに乗り換え、浦内川に向かった。
“東洋のガラパコス”と呼ばれる西表島は、沖縄本島の次に大きな島で、その面積の90%が亜熱帯のジャングルである。車窓から見える緑の色が、本当に深い。目を凝らして、イリオモテヤマネコがいやしないかと観察してみる。しかし、いない。あたりまえか。

「みなさん、西表にようこそー」

らら。運転手さんがマイクを片手にもち、ドスの効いたおじちゃんバスガイドが始まった。
「はい、右見て。これが島に1つしかない信号機です」
おおっ、信号1つしかないんだ。でも交通量も少ないし、果たして意味があるのだろうか…?疑問に思っていると
「この信号機、実際は必要ありません。子供たちの教育用に作ったんです。子供たちが将来、内地(本州のこと)に行ったときに困らないように、ね」

ぁー。なるほど。信号機は、教育用に、かぁ。なんか、いいなぁ。無くても支障のない信号機を、限りある税金をはたいて子供たちのために作るこの島は、本当に素敵だと思う。しかも、いつか子供たちが島から“出てゆく日”のことを考えて作るなんて。切ないだろうな、親御さんは…などとぼんやりと外の景色を眺めていたら、視界が急に開けた。橋の下に、雄大な川の流れが見える。ついに、浦内川へ着いたのだ。
ようやく憧れの西表島にたどり着いた美香。   
マングローブにはいつ会える?つづきは明日…



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