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「では干潟に下りて、マングローブの鑑賞会をしましょう」 カヌーを浅瀬に乗りつける。同乗の高木さんと「せーのっ!」で腰をあげ、思い切って川の中に足を降ろす。ズブ、ズブ―っと足が大地に沈み込む。 「んあぁ……」 カヌーから降りたその瞬間、あたしは自然に声を上げていた。 足が。足の裏が。気持ち、いい。気持ち、いい…。トローリとしたものが、足を包み込んでくる。何、これ? あたしの足の下にあるものは、“泥”だった。 あたしは、その場にしゃがみこんで地面に触れてみた。 熱った肌にひんやりと心地よく、今までの泥とは違う。柔らかい。これが泥なの?水を含んで「トロトロ〜」としている。マングローブたちが生きている大地は、こんなにもやさしく、気持ちがいいものなのか。 |
| あたしは、自然に大地をなでているような格好になっていた。ああ、手のひらが気持ちいい。肌が、手の皮膚が喜んでいるー。思わず両手にすくって、わしづかみにしてみる。 ぬったり、トロトロ〜。柔らかい。驚くほどキメが細かい。 少し重みのある、せっけんの泡のようだ。海水を含んで適度な重さがある。質感がいい。泥の粒が毛穴の奥まで入り込んできそうなほど、マッタリと、ヌッタリと、肌に張り付いてくる。このマット感。心地がいい。存在感が、すごくある。あたしは思わずヌチャヌチャと泥を触りまくってどんどん深く入っていった。 「ヌルッ、ズブ、ズブ、ヌルズブ――……」 沈み、込む。溶けて、ゆく。 私は、完全に泥にハマってしまった。 気がつけば、あっという間に四つんばいになって、肘まで泥につかっていた。掘れば掘るほど、泥は真っ黒になっていく。ふと手に何か当たるので見てみると、枯れて真っ黒になったマングローブの死骸だった。一定の深さまで掘ってゆくと、真っ黒になった葉や枝がモリモリと埋まっていることに気づく。 |
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