美ら島物語
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「では、マングローブの林の中へお邪魔してみましょう。根っこが至るところに出ていますから、出来るだけ踏みつけないように歩きましょう」中は薄暗く、ひんやりとしていた。1歩踏み出すたびに「ヌチャッ」と足が泥に沈み込む。もう、天にも昇る心地よさ。マングローブたちは天に向って、真っ直ぐに枝を伸ばしている。手をめいっぱい広げて、空をつかもうとしている。私は今、その手の中にいるのだ。静寂。まさにこの言葉が相応しい。聴こえて来るのは、遠くの鳥の歌だけ。木漏れ日がキラキラと瞳に眩しい。
「はぁ………」
その神々しさにため息をついた。
ここには、神様がいる。
「なんだ、こりゃ???」
木にぶら下がっている、変な実を見つけた。赤く細長い。新種のバナナか?
「関さん、これ食べられます?」
「……。こ、これはオヒルギの種です。何でこんな形なのか、わかりますか?見ていてください、この種を地面に落とすと…」
ヒュ――ン、プサッ。
「おっ。刺さった!」
「種が落ちる時、泥に刺さって発芽しやすいよう、こんなに硬くて尖がっているんです」
地面をよく見ると、あちこちで本当に種がブサブサ刺さっている。自然はなんて賢いのだ。
しゃがみこんで、またもや泥に触れてみる。

「んん〜…。んん―――っ。どうしてこんなに気持ちイイのかなぁ…」
林の中の泥も、また格別である。
「マッタリ、ネットリ、ヌメヌメ、ドッスン」である。最後の「ドッスン」は、川辺の泥よりドッシリとした重厚感がある、という感触。少し水気が少なく、より多くの腐りかけた葉や枝を含んでいるせいか、ぼた餅のようなボテッとした重さがある。
よく見ると、所々に筒状に泥が突起して、中が空洞になっている。
「関さん、これ何かの穴しょうか?」
「オキナワアナジャコの巣です」
「へー、それ、食えます?」
「………。あ、これはシレナシジミですよ」
「わっ、デカーイ!美味そうー!!」
「……安田さん、食べられるかどうか、ではなく、他の質問もして下さい。一応、エコツアーなんですよね、これ」
「地面を見てください。びっしりと、膝のような形で根っこが出ているでしょ?根を地表に水平に張り、その途中から枝分かれするように呼吸するための根を地表に突き出しているんです。これが直立根と呼ばれる杭のような根です」

うわー、本当だ、人間の膝小僧が地面からたくさん出てるみたい。
「私のこの足の下は、根っこがグニャグニャに入り組んでいるんだ」と思うと、どうにも足の踏み場が無くて、歩くのが自然と忍び足になる。
「痛くない?ごめんね。ちょっとお邪魔させてね」
私は自然に、森と話をしていた。気がつくと、いたわりの心と謙虚な気持ちが私の中に存在していた。



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