美ら島物語
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この干潟のマングローブたちにさよならを告げ、私たちは再びカヌーで漕ぎ出した。西表の景色は、みんな横長に見える(絵で描くと、こんな感じだ)。自分の瞳が、まるでパノラマレンズになったかのように感じる。TVでいうところのワイド画面ってヤツだ。山並みが低く横に広がっていて、空も川もゆったりと横方向に伸びている。ちょっと、不思議な感じだ。

天気が少し悪くなってきたが、逆にこの曇り空が鬱蒼としたジャングルのムードを盛り上げてくれる。曇っていても、川の色は驚くほどキレイな青…でなく、緑色をしている。山の緑が川面に映り込んで、緑色なのだ。水鏡、という表現があるが、この川の水面はまさに緑を映す鏡のようだ。
「ねぇ、ビリジアンって、覚えてる?」
と、私はみんなに聞いてみた。小学校の時、12色の水彩絵の具に“ビリジアン”という色があったのを、みなさんは覚えているだろうか。要は深い緑色なのだが、なぜか絵の具の腹には“ビリジアン”と書かれていた。子供心に、不思議でしょうがなかったっけ。私はそんなことを想い出していた。
「ああ、ガキの頃使った絵の具って、なぜか“ビリジアン”っていったなぁ」
「そうそう、あれっ。ここの緑って、あの色じゃない?」
「うん、そう言われてみれば。うわー、懐かしいな、オイ」
私たちは、みんなで笑った。世代を超えて、同じ思い出を共有できていることを知り、うれしさが込み上げてくる。」
忘れていた、幼い記憶がひも解かれてゆく。西表の緑は、不思議な力で私たちを自由にタイムスリップさせてくれる。



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