
ひと回り歩いて、私たちはカヌーを泊めた川辺に出た。再度、カヌーに乗り込む。最初はグラグラとして戸惑っていた乗り降りも、今ではお手のものだ。
「さあ、そろそろ戻りましょうか」
「…イヤです。帰れない。帰りたくない」
私は、自分の口調の強さに自分で驚いていた。だって、イヤなのだ。
「フフ。また来てください。逃げませんよ、西表は。ずーっと変わらずここにあるんだから」
カヌーは、穏やかに、テラテラと輝く河の水鏡の上を音もなく滑ってゆく。あの光は何だろう?前方の水面が、キラキラと輝いている。
近づいてみると、それは、“泡”だった。ただの“葉”だった。黄色いマングローブの落ち葉と泡が、星屑を撒いたように辺り一面にちりばめられ、その中をツ―――ッと滑ってゆく私たちは、まるで流れ星のようだった。この瞬間、私たちは地球から飛び出して、銀河系の中を泳いでいた。