美ら島物語
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ひと回り歩いて、私たちはカヌーを泊めた川辺に出た。再度、カヌーに乗り込む。最初はグラグラとして戸惑っていた乗り降りも、今ではお手のものだ。
「さあ、そろそろ戻りましょうか」
「…イヤです。帰れない。帰りたくない」
私は、自分の口調の強さに自分で驚いていた。だって、イヤなのだ。
「フフ。また来てください。逃げませんよ、西表は。ずーっと変わらずここにあるんだから

カヌーは、穏やかに、テラテラと輝く河の水鏡の上を音もなく滑ってゆく。あの光は何だろう?前方の水面が、キラキラと輝いている。
近づいてみると、それは、“泡”だった。ただの“葉”だった。黄色いマングローブの落ち葉と泡が、星屑を撒いたように辺り一面にちりばめられ、その中をツ―――ッと滑ってゆく私たちは、まるで流れ星のようだった。この瞬間、私たちは地球から飛び出して、銀河系の中を泳いでいた。

キレイ。泡が、朽ちた葉が、こんなにキレイだなんて――。
きっと干潮の時に胸いっぱい空気を吸い込んだ水底の生物たちが、今頃泡ブクをはき出しているのだろう。

突然、私はうるうるっときてしまった。ぐわぁ――っと、熱いものがこみ上げてくる。胸の奥が、私の心の1番深い部分が、ギュゥ―――ッとする。ものすごい、癒しのパワー。いたわりと友愛の心が胸を締めつける。突然のことで、なんで泣くのか、私にもわからなかった。フタをしていた何かが、流れ出しているような感覚。みんなが、真っ赤になってしまった私の鼻を見て、それでも気付かないフリをしてくれる。
私は、小さいなぁ。大自然の中で、人間は小さいなぁ。
そう思いながら、今来た道を振り返ってみる。
誰も、独りぼっちではない。私も、マングローブたちも、みんなこの地球の一部分なのだと、私は知った。

美香、マングローブになれたかい? つづく…
  (2001.06.21掲載)



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