美ら島物語
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お伽の世界、スイミーに遭遇

振り返ってみる。……何もいない。でも、なにか、いる。恐くなって、みんなの方に泳いでいこうとすると、足元でシャーッ!シャーッ!と何かか動いた!!で、出たぁ―――!!!何っ?オバケっ?人食いジョーズ!?

思い切って目を開けると、それはスイミーだった。
小学校の国語の教科書で読んだ、「スイミー」。弱肉強食の海の中。弱い小さな魚たちは、自らの命を守ろうと知恵を絞って、大きな魚の形を集まって作りながら泳いでみる。すると大きな魚たちは、巨大魚と見間違えて逃げ出す…というお話だ。教科書にあった、あのスイミーの挿絵が、今、目の前に再現されている。何百匹という小さな魚が群れを成し、同じ方向を向いて泳いでいる。一匹がクルッっと方向転換すると、全員がザザザッツ!と振り返る。おお、だれが最初に振りかえっているんだ?ボスはどの子だ?と目を凝らしてみるが、早くって全然わからない。

一体何ていう魚なんだろう、この子たち。色は白くて、所々うす茶色っぽい。色が薄いから、近くにいても気がつかなかったのだろう。変なの、泳いでいかないんだ。クルッ、クルッと10秒置きくらいで方向転換しているだけで、あとは全員でジーっと止まっている。…なんか、一匹くらい、捕まえられそう。これ美味しそうだし。
そろ〜っと手を出してみる。その瞬間に、パパパッ!と反応して動く。は、速いー。とてもじゃないけど捕まえられっこ、ない。魚って、こんなに機敏な生き物だったんだ。

ポンポン、と肩をたたかれて「ウキャー!ついに、出たぁー!」と思ったら、インストラクターの大矢さんだった。
「大丈夫ですか?安田さん、全然見当たらないから心配しました」
「あ、ごめんなさい。あの、スイミーが。スイミーがっ」
「へ?(海面を覗いて)……ああ、あれは鯛ですよ、ノコギリダイ。背中にギザギザがあるでしょ?」
「おおっ!鯛?美味そー。捕まえられます、大矢先生?」
「…海のモノは捕らず壊さず、ってゆーのがダイビングの基本精神なんですけど…あ、あっちに行きましょう。浅瀬の方にはサンゴがたくさんいますよ、ねっ」

大矢さんに煙に巻かれてついて行くと、次第に浅くなり、海底には赤、緑、橙、紫など、色とりどりのサンゴが広がっている。CGで作られたようなカラフルな魚が数え切れないくらい、サンゴの谷間で遊んでいる。ツアーのみんなも、魚のようになって夢中になって泳いでいる。そうか、こっちがシュノーケリングのポイントだったのか、と今頃になって気付く。
キレイ。夢みたいだ。こんな世界が、在るんだ。海の中がこんなにカラフルで楽しいなんて、知らなかった。サンゴは森の木々のようでもあり、草原に咲き乱れる花のようにも見える。そう考えてみると、海の中は、まさに“もう1つの世界”だ。海の中にも、さっき通った深い谷のような所があり、この浅瀬のような山がある。サンゴは森の木々で、魚たちが生きている。地上と同じ世界が、海の中にもう1つ存在しているのだ。あらためて、地球の抱く懐の深さに感動してしまう。

 
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