滑るように、「しげた丸」は舟浮の港へ着いた。とても静かな空気。お家がポツポツと建っていて、フクギの並木が続いていて、サラサラと葉っぱが風になびいている。そこを時々、集落の人が歩いてくる。公園の錆びた滑り台も、野生のニワトリも、とても大きな存在になって目に映る。
「あ、ピアノの音…」
と誰かが言った。ポロン、ポロン…。かすかな音色。舟浮小学校から聞こえてきたのだ。この小学校に生徒はたった5人。先生の子供たちが生徒なのだそうだ。
ここには、生きるために、必要なものだけがあるんだ。それは、つまり…人間にとって大切なのは、家族と、そしてふるさと。この2つを胸にしっかり刻んで生きていれば、必ずいいことがあるさ。…そう、集落が言っているみたいだった。
そして、舟浮で印象に残ったものがもう一つ。それは、港のそばにある大きな木・「カマドマのクバデサ」。「絶世の美女」と謳われたカマドマの悲しい恋の伝説を持つ木。カマドマは、疎遠になった恋人がクリ舟で会いに来るのを、この木の根元でひざが痛くなるまで待ち続けたんだって。
待ちつづけるなんて!
私だったら、到底できない。この青い海を眺めて、いとおしさに押し潰されてしまいそう。でも、そこまで相手を信じるのが本当の恋なのかな? 私のしているのなんて、到底恋とは言えないのかも? カマドマは、本当に強い。 |