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民宿で晩ごはんを済ませ、北村のニムチャーに合流したのは、夜の7時半過ぎ。外はすっかり暗く、きれいな満月が浮かんでいた。街灯の少ない小浜島では、月の光は結構な道しるべになる。けれど、数歩先は漆黒の闇、という道を歩いていると、ふっとどこか違う世界に足を踏み入れてしまったのでは?と思う事が時折あった。旧盆の夜は何でも起こる。だって、あの世とこの世がかぎりなく近づく夜だから…。
そんな事を考え、笛の音がする方向に歩いていくと、どこからともなく浴衣姿の女の子が現れた。やっと人に会えた。嬉しくて、微笑みかけると、恥ずかしそうにチラッとこちらを見た。手にはビニールテープを裂いて作ったフサフサのついた棒を持っていた。
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黄色い浴衣を着た、その女の子の後をついていくと、一軒のお家にたどり着いた。庭の筵の上には、練習の時よりも数が増えたニムチャーが座っている。その中から一人が前に進み出て、大声で何か口上を述べた。小浜島方言のため、何と言っているかまったくわからなかった。だが、後で聞いた所によると、この様に言っていたらしい。 |
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今年も巡りきた旧盆の祭に、楽団、踊り子を引き連れてご先祖供養に参上いたしました「ニムチャー」は私達であります。
口上が終わるとすぐに楽が始まり、その音に合わせて、子供たちが輪になって踊り始めた。一軒およそ15分。一つの曲に合わせて、子供達が延々と踊り続ける。ニムチャーを招いた家の人によってお返しの舞が舞われる事もあるが、基本は同じ。そして、ニムチャーに島酒が振舞われるように、踊り終えた子供達にはヤクルトとバナナなどちょっとしたおやつが配られる。皆、これを楽しみに参加しているようだった。
それにしても…と私は思う。この、子供達の踊りには「子孫が繁栄している事を先祖にお見せする」という意味があるらしい。けれど、たどたどしい足取りと神妙な面持ち。ニムチャーが奏でる不思議な楽の音とあいまって、闇の中で同じ振りを繰り返す子供たちは、どこかこの世のものではない雰囲気を漂わせていた。そして、ほんの1時間程前まで練習に励んでいたニムチャーの少年達にも昼間の面影はなく、あの世とこの世を繋ぐ人の様に思えてくるのだった。
まるで、生きている人間は私ひとりみたい…。
そんな錯覚に浸りながら、もう一度、私は冒頭の言葉をつぶやいた。
旧盆の夜は何でも起こる。だって、あの世とこの世がかぎりなく近づく夜だから…。 |
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