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小浜島の旧盆祭り 何かが道をやってくる
南は南 北は北。村が一つになる中道の踊り
午前5時に携帯電話のアラームに起こされた。外はまだ夜。夕べはあれからどうしたんだっけ…、と寝ぼけた頭で考える。そうだ、北村のニムチャーについて何軒か回ったあと、南村を見に行ったら結局どっちともはぐれてしまってしまったんだった…。そして、「うふだき荘」の前を通ったら、偶然表に出てきたお父さんに招待されてお座敷にあげてもらったんだっけ…。本当に、旧盆の夜は何でも起こる。思いもしない事が次々と。それもこれも、全てご先祖様の計らいだったら面白い。


昨夜の名残の、ウチカビ。
重い体をひきずって、再び練習場所のお宅に戻ると、もう北村のニムチャーは集合していた。少しの音合わせの後、通りに出て行くと、家々を訪ね、祭りの最大の見せ場「中道の踊り」に加わる男衆を起こして回った。


丈の短い着物を着た男衆。 起こされた男衆はたいがい、ニムチャーと同じ様な丈の短い着物を着ているのだが、中には女物の着物を身に着けている人も数名いた。よく見ると、その人達はほんのりお化粧もしている。何故だか理由はわからないそうだが、男役の人と女役の人がいるそうだ。本当の女性ではなく男性に女役をさせる所が、「小浜の祭りは男の祭り」と言われる由縁かもしれない。


それにしても、皆、元気である。眠くないのかと心配になったが、「大事な儀式だから眠くもなんともないさぁ」と笑顔で、けれど真剣な口調で答える。どれだけ彼らが、この祭りを大切にしているかが伝わってきた。
   
体の大きな男衆達がニムチャーの後をぞろぞろついて歩く姿は、なかなか壮観であった。夕べ見た神秘的な雰囲気が嘘の様である。ウークイ(お盆の「送り」)を終えてからの祭りは「生きている者の命の祭り」という意味があるそうだから、それも当然かもしれないが。頭に巻いた鉢巻も白から赤へ、頭巾にして被っている人もいる。ニムチャーが奏でる楽の音も、メロディーは同じだが、コードがマイナーからメジャーになり、テンポもアップテンポに変わっている。聞けば、歌詞も明るい内容に変わっているのだという。


その不思議なメロディーにあわせてぐるぐる回ったり、跳びはねたり、一風変わった踊りが目の前で繰り広げられる。白み始めた空には、ほんのわずかに欠けた月。ヒンプン(家の門の内側にある目隠し)の傍には夕べ燃やしたウチカビが置かれており、そのひっそりとした趣が、目の前の光景とは裏腹にとても奥ゆかしく美しかった。


このままずっと続くのかと思われた踊りがやみ、花笠をかぶった笛の少年4人を先頭に、ニムチャーと踊り子達が歩き出した。いつの間か増えた見物客もその後に続く。数十名の行列が公民館の前、中道(ナカミチ)と呼ばれる通りへ向かう。いよいよ、祭りはフィナーレに入っていく。
北と南。二つの村が近づくにつれ、ぶつかり合う楽の音。得体の知れないパワーが波の様に押し寄せては引き、引いては押し寄せを繰り返し、大きなうねりを造りだす。そのうねりに引っ張られるように、踊り子達の動きも大きく、激しくなる。思わず見入ってしまい、ハッと気付くと、踊りの輪は北村と南村、両方が入り混じり、大きなひとつの輪になっていた。 いよいよ、祭りはフィナーレに入っていく。
南は南(パイ ハ パイ)
北は北(ニシ ハ ニシ)
ヒョォォォォー


呪文の様な文句を唱えながら、踊る人達。笛の音も一層力強くなり、中道に大きな揺れのようなものが現れた。それは例えていうなら、綱引きの時に生まれるエネルギーに似ていて、笛と踊りで力いっぱい北と南がひきあっているような、そんな感じだった。古来、沖縄の綱引きは集落の豊作を占うための行事であるというから、この笛と踊りの綱引きも北村と南村の発展を祈っての事なのかもしれない。


全てが終わって、皆が引き上げた後の空間は、音と踊りの大きなうねりにかきまぜられて、清められた感じがした。
空は、とても青くさわやかで、今日という日が良い日である事を十分に伝えていた。


小浜島の旧盆。
それは、あの世とこの世が限りなく近づく日。
静と動。緊張と緩和、そして発散。
生きている事への喜びと感謝を思いきり表す日。
小浜島の旧盆
不思議な味わいに満ちたこの祭り。見終わった後、なんともいえない清々しい気分を与えてくれるこの祭りに、来年もまた、必ず訪れたい。
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