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海宝館を見学し、貝細工にも挑戦してご機嫌になった私は、厨房へ向かった。何をメソメソしていたのだろう。自分が釣ったマグロだ。最後まで責任持ってさばくのだ。
厨房では、料理長の下里隆雄さんが、まさに包丁を入れようとしていた。
「あのっ、私もお手伝いさせて下さい! 私が釣ったんです、その子」
「…そのねじりハチマキ、気に入った。よっしゃ、エプロン着けな」
や、やったー。プロが働く厨房に、おそるおそる立ってみる。 |
「じゃ、始めるヨ」
グサッ! ドカッ、ダン、ダンッ!
「ぁああああ〜っ!!」
「……なに?」
「い、いえ、何でもないですぅ…」
覚悟していても、心が痛む。料理長は、慣れた手つきで手際よくさばいていく。
頭を豪快に落とし、内蔵を取り出す。ヒェエエエ〜。グロテスク過ぎる〜ぅ。
ザクッ、ゴリッっと、斬るたびにスゴイ音がする。沖縄の壮大な海を泳いでいただけあって、骨太なのだ。
「内臓も、全部キレイに洗って。捨てるトコなんて、1つもないサー」
う、うぅ。これ、マグロの胃かなぁ? ヒダヒダがちゃんと付いている。生物の授業で習った通りだから、スゴイ。
さばきながら、料理長がさっそく1品作ってくれた。
「もしかして…これは、昨日カツオ工場で食べた…」
「心臓ヨ。これ食うと、美人になるぞー」
楽園、宮古島といえば、マンゴーやパパイヤなど、トロピカルな食べ物が食べられると思っていたのに、なんで昨日から返り血をあび、心臓ばかり食べているのだろう??
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しかし、口に入れるとそんな疑問なんて吹き飛んでしまう。美味しい。全然、生臭くない。高級なレバ刺しを、ワサビ醤油で食べているカンジ。プリッ、プリッと噛みごたえがよく、オツな味だ。
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半身に開いたら、それをさらに4分の1の大きさにさばいていく。
「ほれ、握ってみ。せっかくだから、ザクッといってみなー」
なんと、料理長がマイ包丁を貸してくれた。プロは自分の包丁を他人に触らせないというけれど、さすが宮古人(ミヤコンチュ)、優しく、おおらかなのだ。
感激と、恐怖で、手が震える。
骨がバキバキ、音を立てる。すごい、肉厚だ。ここまで大きいと、魚というより、“肉”だ。そっか、魚肉って言うけど、なるほど、こりゃ肉だわ。
骨の周りの残った魚肉も、丁寧にスプーンでそぎ落とす。これで高級なネギトロ丼が作れる。そいでも、そいでも、肉がある。スゴーイ長いのが取れたので、うれしくなって、ちょっとつまみ食い。
これにて、終了。これで4分の1身なんだから、とにかくデカイ。
ズッシリと両腕にかかる重みに、感慨深いモノを感じた。
大人になると、自分が歯車である場面が多い。
全体像が見えないまま、ある1部分だけを機械的に役割分担する。
でも、今、私は自分で魚を釣って、さばいて、食べるのだ。
スーパーに並ぶ魚の切り身を買うのではなく、
その過程にちゃんと関われたことが、とってもうれしい。 |