集落のメイン道路(といっても車2台がすれ違える程度)を子ども達が「パーントゥがくるぞ!」と叫びながら走っていきます。
子ども達について商店の脇の坂を上ると、集落の入り口にパーントゥの前に行なわれる、ツマッサリという悪魔祓いに使われる豚の骨を下げた縄が張ってありました。
坂を越えると、パーントゥが現れる現場を写すため、さとうきび畑にTVカメラマンやレポーターなど報道陣が集まっています。
その先にパーントゥが生まれる聖地「ンマリガー(生まれ井戸)」があるようです。
ンマリガーには一般の人は立ち入れません。
子ども達は興奮して、井戸と集落までの道をずっと走りまわっているよう。
興奮しすぎて怒られている子も・・・。
おちつけー!
一旦集落のようすを見に行くと、坂の下で待ち構えていた人たちが、私の姿を見てビクッと体を震わせます。
「もう出たか?」
集落に先ほどまでののんびりした時間は消え、人々の顔には緊張と興奮とが入り混じっています。
赤ちゃんを抱いたお母さんも増えていました。
パーントゥは新築家屋や新生児に好んで取りつく悪霊を祓うと同時に、嘉例(カリー)をつける(祝福する)というもう一つの役割も担っています。
サトウキビ畑まで戻る頃にはいつの間にか空が夕日で赤く染まり、いつパーントゥが出てきてもおかしくない雰囲気に。
ドキドキ、ドキドキ。
否応なしに緊張が高まります。
「き、き、来たー!!」
井戸の近くまで覗きに行っていた子どもが叫び声をあげたかと思うと、
いっせいに逃げてきました。
そして、子ども達の後ろについにパーントゥの姿が。
パーントゥは子ども達を追いかけるわけでもなく、ゆっくりと大股で歩いてきます。
黒い仮面をつけ、全身真っ黒の泥で覆われたその姿は、映像や写真で見ていた姿より異様で、ゆっくり歩いているはずなのにどんどん近づいているような迫力。
見ている人は恐ろしさからジリジリと後ろに下がっていきます。
「あっ!」と声にする間もなく、小学生ぐらいの男の子が捕まりました。
捕まったというよりパーントゥの体に飲み込まれるように、すっぽりと抱えられました。
数秒後、パーントゥが離れた後には、髪から顔から泥だらけで、着ていた洋服の色もわからないほど真っ黒な男の子が。
男の子は先ほど走り回っていたのが嘘のように、放心状態でフラフラ歩くのがやっとのよう。
こ、これがパーントゥ!!
どうしよう・・・怖すぎる!!
1体に気を取られていると後ろから、後ろに気を取られると左から、3体のパーントゥが四方八方から襲っていきます。
「キャー!ひぇーーー!!」
厄落としなのだから、泥を付けられたほうがいいのは頭ではわかるのですが、恐ろしさのあまり反射的に逃げてしまいます。 |