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国指定重要無形文化財 組踊への誘い −琉球芸能の古から未来−

組踊 −その誕生・派生・未来−
作品鑑賞 −朝薫五番から−


特別インタビュー 組踊 −その誕生・派生・未来−


第三回「組踊の現在・未来」


組踊の現在の状況について教えていただけますか?


「現在は二つの系統がありまして、地方で伝承されている組踊と町方の舞踊家(舞踊研究所)によって継承されてきた組踊があり、後者が重要無形文化財の指定を受けています。
沖縄の本土復帰以前は、琉球政府文化財保護委員会が玉城朝薫が創った組踊五番を文化財に指定しましたが、復帰の日(1972年5月15日)に朝薫五番とその他の組踊も国の重要無形文化財に指定され、能や歌舞伎や文楽と並んで重要無形文化財の仲間入りをしたわけです。
組踊は初演以来、男性が多く上演してきたものですから、文化財に指定されている組踊は、男性が上演するという伝統を守っています。女形の伝承があります。
でも、なかなか、若い男性役者が育ってきませんでした。この十年来は県立芸術大学で学んだ青年達が出てきたことで、組踊は、わずかですけれども、危機を脱出したのかなと思います。
しかし、若手の芸能人の育成を県立芸大に任せっきりにするわけにはいきませんから、当劇場(国立劇場おきなわ)でも、若手の育成・養成は大事な事業の一つであるととらえています。
芸というのは、若いうちから仕込んでおかないと身につきませんので、時間のかかることですが、若い時にうんと基礎を身につけてもらって、役者として成長する事を目指してほしいな、と思っています」


多良間島の八月踊りには、女の子が二人登場しますが、元々は男性が演じていたのでしょうか?


組踊の現在・未来 「はい。元々は男性ですね。戦後になりまして、芸能に対する意識や社会の状況が変わってきたので、女性が組踊をやるようになったんですね。
無形文化財に指定されている組踊も一時期、女性が出演していた事があったんですよ。現に、記録映画をつくった時は、若い男性の役は女性の舞踊家が演じています。そういう時代もありました」


先日、県立芸術大学の学生達で『白雪姫』を演じるなど、新しい試みがなされてきています。また、与勝地域の子供達による『組踊 肝高の阿麻和利』なども人気がありますよね。今まで組踊を見た事がなかった人達でも、それらの作品がきっかけとなって本家も見てみようという事があると思うのですが、それについてはどう思われますか?


「大賛成ですね。
組踊の将来はどうあるべきか、という事を考えると、儒教道徳の呪縛から解き放たれなければ、組踊の新しい展開はないんじゃないか、と私は思っています。
例えば、組踊の様式、組踊の言葉、そういうものを使いながら、ストーリーは全く新しい別のものをとらえていく。そういう事が絶対必要だと思うんですね。
古くからのものを守っていれば、古典は守れるかというと、実はそうではありません。その時代、時代の人々の感性というものを、芸能の中に取り込んでいかければならない、昔のままというものは滅んでいく一方だと思うんですよ。
例えば、舞台だって、今は電気があるから電気を上手に使って観客に見やすいような照明や音響をしますよね。
昔は松明を焚いていたからといって、その通りにすれば、その芸能は伝承されるかというとそうではありません。
衣装だって昔のままを頑なに守ろうとすれば、化学繊維の布を使ったらいけないわけですから。細かく言うとそういう事になりますが、その時代、その時代にある新しい素材、新しい物語で組踊を展開していくという事は、絶対に必要だと私は思います」


現代の人が面白いと思う感覚を大事にして…。


「そうそう。それがいいと思いますね。例えば、沖縄では音楽の分野では、もうすでにやっている事なんですね。沖縄の古い音楽だからといって、すべて方言でやらなければいけないか、というとそうじゃないですよね。
新しい、いわゆる大和節も入れるし、音階だって沖縄にあったものではなくて、他の要素も取り入れながらやっていますよね? しかも楽器も三線だけでやればいいのかというと、洋楽器も使いながら新しい音楽もつくっていく。
組踊の現在・未来
そういう風にして音楽というのは、時代のニーズに応えているわけですね。だから、沖縄の音楽というのは、生きている芸能だから今でも根強い人気を持っているわけですよね。生命力があると言ってもよいでしょう。
それは、舞踊だってそうなんです。舞踊も次々と新しいものができているんです。その時代時代の人達がよかれと思えば、古いものでも繰り返し上演されるし、歌われる。その中に琉球音階や舞踊の様式も、ちゃんと活かされている。
そういう風にして他の分野では非常に積極的に、それぞれの時代の人々の感性が反映されているんですね。しかし、組踊だけは、なぜかしら古典からなかなか脱却できない、というのがあったんです。
戦後、新しい組踊というのができていたんですよ。できていたんですけれども、やはり、忠と考の精神から脱却できないというのがあったんですね。
組踊の現在・未来 そして、組踊にはまだ、喜劇というのがないんです。作家の大城立裕さんが朝薫五番にあやかろうといって、作品を五番お創りになりました。その中に喜劇が一本ございますけれども、まだ上演はされていないんですね。大城立裕さんがつくられた五番というのは、実は、儒教道徳の呪縛から解かれた作品なんですね。ですから、大城さんの作品が上演される。あるいは他の方々の作品でも結構ですけれども、そういう儒教道徳にとらわれない所に、組踊の新しい生命力が出てくるだろうと思います。」


伝統の心は残しつつも、現代の人達も楽しめるものとして、という事なんですね。


「ええ、ええ、そうなんです。そういう風に取り組むことで、組踊が多くの人達になじんでもらえる事になると思うんですね」

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