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「ああ、そうなんですか。ふーん。でも、それならいいかもしれないな。沖縄にも少し慣れて、本土の景色が恋しくなってきた頃かもしれないし。あぁ、それに、温泉や日本酒もあるわよね。……だけど、なんでまた岩手なんです?」
「いや、実はさ……」
そう言ってQ氏は泡盛のグラスを目の前に掲げた。ガラスの酒器の中で揺れる透明な液体に、光がさしてとってもキレイ。だけど、これが何か?
「なんだ、ムードのない奴だな。まぁ、そんなに先を急ぎなさんな。てーげー、てーげー。ゆくーい行こうぜ。あのさ、これは『南雪』っていって石垣島の請福酒造っていうところでつくっている泡盛で、基本的には岩手県だけの限定販売(注1)。岩手県の『かけはし』っていうお米が原料で、沖縄県内ではここでしか飲めない珍しい泡盛なんだ」
南雪、か。なんだかロマンティックな名前だな。目の前にイメージがひろがる。真っ青な空からエメラルドグリーンの海にふりつもる雪。その雪は、海の底でやがて珊瑚に変わる……。叶わぬ夢だけれど、いつか絶対に見てみたい光景。
「岩手のお米で泡盛をつくる、っていうのが面白いですよね。日本酒ならわかるけど」
「そう。でもね、岩手には結構あるんだよ。沖縄、というか石垣島の特産品を使ってつくったものが。アイスクリームだろ、イカの塩辛だろ、それにラーメンもある。まぁ、言ってみれば今流行りのコラボレートってやつだな。ガッハッハ」
大笑いして、Q氏は南雪を飲み干した。若者の言葉(コラボレート)を使えたことがよほど嬉しかったらしい。
「コラボレート、ですか。ふーん、ちょっと面白そう。あ、でも、なんで岩手と石垣なんです?」
よくぞ聞いてくれた、とばかりにQ氏の目がキラリと光った。げげっ、まずいとこ突いちゃったかも。酔っ払いの話ほどエンドレスに長いものはない。
「それにはさ、深い理由があるんだよ。これがまたいい話なんだけど、どうしようかなー。yurippeにはまだもったいないかなー」
「あー、じゃ、それはまた今度ってことで。お酒の席じゃないところで聞かせてください。ほら、せっかくの南雪、いただきましょう! どんどん注いで、ハイ、かんぱーい!(←BEGIN調)」
こうして久茂地の夜はふけていった。
その後、岩手と石垣にまつわる大きな渦の中に巻き込まれていくことを、この時の私はまだ知る由もなかった。
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