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その昔、家内工業で泡盛を造っていたころ、杜氏は女性の仕事だったそうだ。米を蒸し、黒麹菌を撒き、34度〜37度の間で2日間ほど昼夜関係なく温度管理を行う作業はとてもハードで、酒屋には嫁に行くなと言われたほどらしい。
時代も変わり、造り酒屋から酒造所として量産を行うようになってからは、いつしか男性の仕事となった。
そんな時代の流れの中、沖縄県内47酒造所の中で唯一、女性の杜氏が泡盛を造っている酒造所がある。そこは宮古島の平良港からフェリーで約30分、伊良部島にある『宮の華』だ。
社長は快く迎えてくれ、おいしいモロミ酢をいただきながらお話を聞いた。
「うちは従業員のほとんどが女性なのです。」
「女性は子供を産み育てるという大きな役割を担っていますね。ゆえに、細かくやさしく心配りができる。泡盛を造るときにもそんな細かさや優しさで育んでくれるにちがいない。だから、女性に泡盛造りを託しました。」
「あ、もちろん、男性が造る酒が美味しくないという話ではありませんよ。ただ、母の温もりのような優しさと安心感が広がるような泡盛を造りたいと思ったからなのです。」
それから工場を案内していただいた。瓶詰めの作業を行っている。
少しの変化も見逃さないような厳しい眼差しの中にも、赤子を見守るような母親の優しさを感じた。ホッ。
取材も終わり、夕方のフェリーで宮古島に戻った。夜はもちろん泡盛だ。マクラム通りの居酒屋で、宮の華の『豊観親(とぅゆみゃ)』という銘柄を頼んだ。これは宮古だけでしか売っていない、宮古だけでしか売らない、こだわりの限定商品なのだ。とはいっても宮古島の居酒屋ではごく普通に飲めるし、島のお土産品店でも普通の値段で買える泡盛。
封を切ってやわらかな香りを楽しむ。目を閉じると酒造所の光景が瞼の裏のスクリーンに映し出された。浸りながらグラスに注ぎ、口に含んでみる。うーん、まろやかで優しい。手のぬくもりに包まれていくような酔い心地。ホッとする泡盛です。
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