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「美ら島物語」メールマガジン「ちゅらしまニュース」発 泡盛コラム


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文・森山 卓


vol.29 春の雨

桜が咲き始め、一足先に春の予感を感じはじめた1月の沖縄。
なんだか心が躍ります。そんな中、春を探しに酒造所巡りにでかけました。
ところは那覇市小録にある宮里酒造。泡盛『春雨』を造っている蔵元です。戦後間もなく建てた工場で、今でも泡盛を造っている。長い年月で少々くたびれているけれど、晴れた日には天井の隙間から陽射が差し込むレトロな建物に、ちょっぴり新鮮な驚きを感じた。


専務のトオルさんとゆんたくが始まる。
『春雨』という名の由来について聞いてみた。


戦争で、すべてが焼き尽くされた那覇市。美しい風景が全て消えてしまった。戦後、その荒廃した風景の中、誰もが失意に打ちのめされていたころ、宮里酒造は酒造りを再開した。
復興するんだ。そして美味しい泡盛を造って人々に勇気と元気を与えたい、と願いながら。
うーん、いい酒が出来たぞ。さて、名前を決めなくてはいけないな。
いろいろと考えた。ふと、窓の外に目をやると、優しい雨がシトシトと降り注いでいた。「春」は希望、「雨」は恵み。
戦後の沖縄に希望と恵を与えることができる酒になるように。という願いを込めて、『春雨』と名づけた。


春の雨。…天井から差し込む陽射しを見つめていたら、貯蔵タンクから、ほわ〜んとフルーティーな香りが漂ってきた。うーん、いい泡盛はバナナのような香りがするものだ。


目を閉じて吸い込んだ。春の風景が浮かんでくる。
草木に息吹を与え、緑葉がまぶしく輝く。少し湿った風が吹き、新緑が柔らかく揺れ、鳥のさえずりが聞こえてくるよう。まさに春を感じる泡盛だ。


電話が鳴った。在庫の問合せの応対をしている。電話を終えて、申し訳なさそうに専務のトオルさんが語った。
『うちは小さな小さな蔵元だから、造れる量にも限りがあります。品薄で希少価値が高まって、流通価格が上がっているようだけど春雨を好きで飲んでいただいている方々にホント申し訳ないです。』と。


そう言われると、なおさら欲しくなるけれど、ないものはないのだからしかたがない。酒屋を足しげく廻って探すしかないのだが、たまに住宅街の商店や、小さなスーパーの棚にポツリと見つかることがある。
実は私、春雨の密かな大ファンで、探し回って手に入れているのです。


さーて、今日も春を探しに、商店巡りに出かけてみましょうかね。


みなさまも、酒屋巡りで、春を探してみませんか。


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