
与那国島をはじめて訪れた2年前の夏の日、ある人と、ある泡盛に出会った。
そして、それは僕の心の中に永遠の思い出として残るものとなった。
酒造所の取材で島を駆け巡る日々の途中、真夏の陽射しに体調を崩し、熱っぽい体でやっとこさ島へたどり着いたのがお昼前。食欲はなかったが、何か食べなくてはと思い、最初に見つけたお店に入ることに。そして、それは仲良し夫婦がやっている、とある割烹だった。
「昨日カジキが上がったからフライ定食にしたら」と、おかみさんにすすめられ、それにした。全部は食べきれなかったが、美味しくて元気になったような気がした。
「一人? 旅行? あっそう取材。無理しちゃだめよ。島にいるうちは、おなか空いたらうちにおいでよ、じゃぁ、いってらっしゃい。」
一人旅で病み上がり、少々心細かった僕にやさしい言葉をかけてくれたのが嬉しかった。その晩もクタクタだったけれど、なんだか話がしたくなり、割烹を訪ねた。世間話から人生話に話がはずみ、ご夫妻と楽しい語らいの時を過ごさせてもらった。さりげなく気遣ってくれて、元気づけてくれた。
結局、島にいる間、夜はこの割烹で過ごした。島で今一番人気だと、おかみさんにすすめられた銘柄の泡盛を飲みながら。
「また来ます!」と島を後にし、2度目に島を訪れたのはそれから9ヵ月後。久しぶりに大将とおかみさんに会えることを楽しみに、石垣からの飛行機に乗った。島に着いて、割烹の側を通る。夜が待ち遠しい。「久しぶりです!」って驚かせよう。またあの泡盛を飲もう、とか思いながら、日暮れを待って一人でテクテク割烹へ向かった。あれ? ちょうちん灯いてないや。今は夜しかやってないのかな。と思い、近くの居酒屋で時間をつぶして割烹へ行ってみたが、やはり赤いちょうちんに明かりは灯っていなかった。そうか、今日は定休日なんだ。ま、明日があるさと宿に戻り、翌日の晩もテクテクと歩いていったが、また閉まっていた。
おや?っと思い、宿に戻って親父に聞いてみた。一瞬、沈黙したが、ぽつりと一言「おかみさんがね、亡くなっちゃったんだよ。一昨年大将が倒れてね、リハビリしながらやっと夫婦で店を再開して頑張っていたんだけどね、大将の看病で無理がたたっのかもしれないね。
大将は元気なくして、お店閉めたままなんだよ。」・・・
会いたかったな。二人の笑顔に。
その晩は、割烹ですすめてもらった銘柄の泡盛で、宿の親父と静かに過ごした。「おかみさんに、あの時はありがとうって一言伝えたかったな」って話したら、「出会いがあれば別れもあるさ。」って慰めてくれた。
僕にとって思い出となった銘柄の泡盛は「与那国30度」、たまに那覇でも飲むことがある。爽やかな香りが漂うと夏の日の眩しい陽射しと鮮やかな島の風景が浮かんで切なくもなるけれど、ありがとうって心の中で呟けば、あの日の二人の笑顔に出会える素敵な泡盛なのです。
|