美ら島物語
けいさい予定 サイトマップ
美ら島検索
「美ら島物語」メールマガジン「ちゅらしまニュース」発 泡盛コラム


TOP

バックナンバー


文・森山 卓


vol.50 東京で泡盛! 春雨5年30度

8月のはじめ、東京は赤坂のとある居酒屋で、宴の席があった。
まずはビールを飲んで、次は何にしましょかね?とメニューを見ると、泡盛が結構揃っているではないか。本土でも泡盛が当たり前のように飲めるって嬉しい限り。
なるほど、ふむふむと銘柄を見ていたら、沖縄県内でも手に入りにくくなった「春雨5年30度」がリストに載っている! 意外なところでお宝発見! すぐに宴の面々に伝えた。
「春雨は、すでにないかもしれませんが、もしあったらみんなで飲み干しちゃいましょう」と、カクカクシカジカうんちくを並べ、みんなの期待を高めた後、お店の人を呼んだ。
「春雨ありますか?」と聞くと、「いえ〜す!」とのお答え♪

おおお、『春雨』は我が家にもほんの少しだけ残っているが、もったいなくて最近飲んでいなかったし、行きつけの泡盛バーでも半年以上も入荷待ちの状況だ。内心、”ふとぅふとぅー”(*1)したが、平静を装って「んじゃ、ロックをダブルでね。」と注文した。

沖縄の居酒屋で泡盛といえば、1合単位かボトルで取って、水割りで楽しむのが一般的な飲み方なのだが、このお店ではショット買いらしい。
ま、そんなことはどうでもよいのだ。春雨が飲めるのだから!
ワクワクしながら待っていると、運ばれてきたグラスには春雨がなみなみと注がれていた。
うひ〜、太っ腹! ダブルのダブルって感じ。ラッキー♪
「をいをい、価値を知らぬか? そんなに注いだらもったいないぞ!」
と言いたくなったが、そんなこと自分から言うほうが、よほどもったいないから、黙っておいた。
宴に出席している全員で『春雨』を注文。飲みだした。うーん、いい泡盛はフルーティーな香りがするものだ。まさに『バサナイかばーやさ』(*2)

『春雨』を造っている宮里酒造の専務さんに電話をかけた。
「専務、今東京にいるんですが、春雨5年30度を見っけて飲んでますよ」
『おおお、そうですか、ありがたいことです。恐らく問屋さん経由ですが、多分もう入荷はないと思います、本当に在庫がなくて申し訳ないのですが…』
「やっぱり! そうだと思ったので、今みんなで心して飲んでいるところです」と伝えて電話を切った。

ほっほっほ、もう入らないと聞いたら余計に美味いではないか。満足感に浸りながらおかわりを繰り返しているうちに、ついに時がやってきた。
「すみません、もうなくなっちゃいました」と申し訳なさそうに店員さんが言いにきた。(ほんとはこいつらどれだけ飲めば気がすむのか、と心の中で思っていたかもしれないが。)

おおお、ついに飲み干したか。
うーん、久しぶりに腹いっぱい春雨を味わえた! しかも東京で!
今宵は素敵な宴であった。とさーふーふー(*3)の心地で店を後にしたのであった。

飲んでいる途中でお店の人に、春雨がいかに品薄で素晴らしい泡盛であるかなどと、伝えてみようかと少し考えたが、所詮、酔っ払いのたわごとに聞こえるかもしれないからやめておいた。しかし考えてみると、もう入荷しないであろうから、伝えたところでそれはすでに思い出にしかならない。
ま、どちらにしても黙っておいてよかった。知らぬが仏とはこのお店のことかもしれない。ありがたやありがたや。

【標準語的うちなーぐち訳】
(*1)『ふとぅふとぅー』=ここではカチャーシーを踊りたくなるような嬉しさを現す意。ふつふつと煮えたぎるような感動!
(*2)『バサナイ かばー やさ』=バナナの 香り だよ。
(*3)『さーふーふー』=ほろ酔い気分。

戻る 進む




美ら島物語泡盛コラム
この記事に関するご意見・ご感想をこちらまでお寄せ下さい。