ところで、
山口夫妻が暮らす与那国島は、
天気がよく空気が澄んだ日、
年にほんの数日ではありますが、
西の端から、
台湾の島影が望めます。
私は一度だけ、
与那国を飛び立ったばかりの飛行機の窓から、
台湾の山々の、
雲とせりあうようなシルエットを見つけ、
おでこを窓にはりつけ、
その光景に見入ったことがあります。
北上する黒潮の流れのなかで、
それに体を添わせるように、
けれどもガッシと海底を掴み構える与那国は、
断崖絶壁に囲まれた米粒型の島。
そして島には3つ、
集落があります。
山口さんが暮らすのは、
東シナ海側ではなく、
太平洋側の比川浜という砂浜の辺りに広がる集落。
山口さんの家は、
この集落のはずれ、
急な坂道を、
あまりに急なものだから
ちょっと不安になりながら、
意を決してアクセルを踏み、
短いながらに緑のトンネルを抜けた、
その先、にあります。
ささやかな台地につくられた小さな畑。
煉瓦造りの窯。
山口さんの家は、
そして工房は、
すっかり辺りに馴染んだ風情で、
ここにあります。 |