あれは今から5年前。浦添市前田がまだ僕の個人事務所だったときのこと。当時、僕は浦添城を舞台にした「英祖王」の物語「太陽(てぃーだ)の王子」という作品作りに必死だった。
本番が間近になったある日、僕は一人、城にのぼった。朝もやの陽ざしの中、ひっそりと厳かな空気に包まれ、シンプルな気持ちで僕はディーグ洞(がま)のある「浦和の塔」に向かった。そしてその「朝もや」が、実は線香から立ちのぼる、おびただしい白い煙であると気がついた瞬間、僕の脳裏に鮮やかな記憶がよみがえった。
「浦添城は、どうして世界遺産に登録されなかったのですか?」
あの日、城案内をしてくれた浦添市の文化財担当の下地氏への質問は実は何気ないはずだった。彼は、小さな溜息を一つつくと、僕に短くこう答えた。
「整備が間に合わなかったからですよ・・・」
僕は彼の言葉の意味が解らなかった。
やがて、ぽつりぽつりとこう続ける。
「『遺跡』を掘ろうとしたらね、平田さん、『遺骨』が出てくるんですよ。城の整備の前に、まずは遺骨収集から始めなければいけなかった。僕たちは、その作業を三十年近くやってきたんです。気がついたら世界遺産登録に間に合わなかった。悔しいですよね。首里城より、もっと古い王都(みやこ)が、ここにあったはずなのに・・・。」
そういって、静かに手を合わせた。
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