親父の怖い話は青年時代、夕方、畑の作業を終えて帰宅するときのこと。
当時、島では殆んどの家で農耕用の馬を飼っていたらしく、親父も自慢の真っ白い馬を引いて夜道をとぼとぼと歩いていたという。すると、手綱を引く馬の動きに異変が起きた。突然、見えない暗闇に向かって激しく嘶(いなな)き、前足を高くあげて前進することに抵抗するというのである。馬の豹変にただならぬ雰囲気を感じた親父が向かおうとしている村の方角に目をやると、人の体ほどある大きな火の玉が、道の上をゆらゆらと漂いながら近づいてくるではないか…。「うわ〜〜〜ッ!」と腰を抜かす親父。白い馬は、更に激しく声を荒げると口から白い泡をぶくぶく出しながら、手綱を握る親父の手を千切らんばかりの勢いで嘶いている。すると、その大きな火の玉は、動けず尻餅をついたままの親父の目の前を、ゆらゆらと浮かびながら、ゆっくりと通り過ぎていき、やがてあるお墓の前まで来ると今度は突然…消えた。
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