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沖縄の島唄巡り 恋ししまうたの風 〜南の島々のうたを訪ねて:第30回「月ぬ美しゃ」(石垣島・竹富島)

「月ぬ美しゃ」の歌詞と大意(石垣島・金城弘美さん)

広く知られている歌詞(作詞者不詳)

一、月ぬかいしゃ 十日 三日
   女童かいしゃ 十七つぃ
   ホーイーチョーガー

ニ、東からあーりおる 大月ぬ夜
   沖縄ん八重山ん照らしょうり

三、あんだぎなーぬ 月いぬ夜
   ばがーけら遊びょうら

(大意)

一、月の美しいのは十三夜
   娘さんの美しいのは十七歳の頃

ニ、東からのぼるお月様よ
   沖縄本島も八重山も分け隔てなく照らして下さい

三、あれほどの大きな月の夜ですもの
   我々遊びましょうよ

石垣島「月ぬ美しゃ」

「八重山民謡のなかで昼の子守唄は『あがろうざ』や『こーねま』。
石垣の人はね、子守唄=『あがろうざ』と思うはず。
一方、『月ぬ美しゃ』は夜の子守唄なんですよ。

『とぅばらーま』を唄えと言われても唄える人は少ないけれど、『月ぬ美しゃ』は民謡をやっていない人でも、誰もが唄えると思います。
耳に入る機会の多い唄なので、とくに習った覚えもありません。
沖縄本島でいったら『てぃんさぐぬ花』みたいな感じで、入りやすい覚えやすい唄なんですよね」

そう語って下さった石垣島の金城弘美さんはふたりのお子さんがいらっしゃいます。

「月ぬ美しゃ」をお子さんたちに唄われましたか? と尋ねてみました。

「子守しながら唄っていましたね。
“どの唄が眠るかな〜?”と思いながらいろいろ唄っていましたが、『月ぬ美しゃ』は眠ってくれましたよ。

ホーイーチョーガーという囃子は、『ちょうが節』という唄には出てきますが、ふだんは使いません。きっとあやしているのでしょうね」

いまや頼もしく成長されたお子さんたちの幼少時代を思い出したのか、弘美さんは懐かしそうに“やさしいお母さん顔”になりました。

「八重山には月を詠った唄が多い気がします。
大潮の満月のときには月の光で潮干狩りに行き、満月が真上に来た時に月に願を掛けていた。

2番にある“大月ぬ夜”は“月加那志(つきんがなし)”につながり、月を崇める言葉なのです。
自然とともに生活しているからそういう唄が生まれるんですよ」

八重山の玄関口である石垣島。新空港ができ、国内外からの観光客の方も年々増え、島の中心部には飲食店が並び賑やかな様相を呈しています。でも、中心部を離れればまだまだのどかな八重山諸島の島のひとつ。

海に山に、豊かな自然と伝統行事が息づく島で暮らす弘美さんの“自然とともに生活している”という言葉は、とてもしっくりときました。

「歌詞のなかに“十日三日”とありますが、これは十三夜のことです。
毎年開催されている『とぅばらーま大会』も十三夜に開催されています。
十三夜というのは満月よりちょっと欠けている月です。
例えば満開の桜や満月は誰もが美しいと思うでしょう。

でも、まだ完成じゃない、完成に限りなく近い未完成に、“想い”を託すんだと思います」

弘美さんの言葉に、いつも参考にしている仲宗根幸市著『島うた紀行』の「月ぬかいしゃ(夜)」の解説に、「琉球列島では十五夜の満月をうたった歌は多いが、十三夜をうたったのは特異。」というくだりがあったことを思い出しました。

ふと

「過酷な人頭税等で虐げられている厳しい環境のなかで、完璧ではなくとも、限りなく完成に近いものに憧れを見出し、望みを託して謡っているのかもしれませんね」

と思いついたことを口にすると

「あぁ、そうかもしれませんね」

弘美さんはむかしの八重山を想ってか、こころなしか遠くの庭先へと目を向けたように見えました。

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(2014.2.27掲載)

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